勃起の仕組み 勃起力の維持方法と朝立ち(朝勃ち)の意義
「勃起」は男性にとって身近な、そして大切な機能です。しかし、勃起の仕組みを知っている方は少ないのではないのでしょうか?仕組みを理解すると、歳を重ねても勃起力を維持する方法が見えてきます。適切な知識を身につけ、勃起と上手く付き合えるようになりましょう。
目次
勃起の仕組み
勃起力を維持する方法
勃起しないでいるとどうなる?
海綿体を柔軟にして、勃起力を維持しよう
朝立ち(朝勃ち)は勃起のメンテナンス
射精は前立腺がんの予防にも
まとめ:勃起して陰茎の健康を守ろう
勃起の仕組み
[1]より引用
まず、勃起の仕組みを説明します。
陰茎は、2本の「陰茎海綿体」と1本の「尿道海綿体」、それらを取り囲む「白膜」と呼ばれる靭帯組織、そして「動脈」と「静脈」、「神経」で構成されています。
この内、勃起に重要となるのが「陰茎海綿体」です。
性的刺激を得たり興奮が高まると、神経の働きによって陰茎海綿体内の動脈が拡張します。動脈が拡張すると血流が増加し、増加した血液によって陰茎海綿体は膨張します。陰茎海綿体が膨張すると、海綿体を取り囲む白膜が圧迫され、その圧力によって、海綿体周囲の静脈が閉鎖されて血液が流出しなくなり、勃起が維持されます。
以上が勃起が起こる流れです。
簡単なイメージとして、「勃起」とは、スポンジ状の海綿体が血液を含むことによって膨張する現象だと考えてください。
勃起力を維持する方法
勃起は陰茎海綿体(スポンジ)が膨らむ現象なので、この陰茎海綿体の柔軟性を維持することが、勃起力の維持には非常に重要です。
次は、「最近弱くなってきたな」と感じている男性には特に知ってほしい、勃起力を維持させるためのポイントを解説していきます。
勃起しないでいるとどうなる?
具体的な方法の前に、少し話はそれますが、男性が長期間勃起しないでいると、どうなると思いますか?
実は「前立腺がんの術後」がその状態です。
[2]より引用
前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の直下に存在します。前立腺は、精液の成分である「前立腺液」を生成している他、尿道と射精管(精巣から伸びる管)が内部で合流しており、排尿と射精の両方の機能に関係していると言われています。更にこの前立腺の周囲には、勃起するために必要な神経が通っています。
前立腺がんの手術をすると、大なり小なりこの神経が傷つき、勃起機能が一定期間損なわれます。神経の機能は時間経過で回復しますが、不思議なことに、神経が回復した後も、勃起力は損なわれたまま回復しない場合が多いのです。
これは神経の問題ではなく、陰茎が構造的に勃起しにくくなってしまったことが原因です。
具体的には、術後勃起できない状態がしばらく続いたため、本来なら膨らむはずの陰茎海綿体が固まり、柔軟性が失われてしまったのです。
この海綿体が固まる現象は「線維化」と呼ばれ、元の柔軟性が戻ることは基本的にありません。
長期間放置されたスポンジは、カピカピに縮んでしまい、水をかけても膨らまなくなってしまいますが、長期間勃起しないでいると、それと同じ現象が陰茎海綿体でも起こってしまうのです。
海綿体を柔軟にして、勃起力を維持しよう
前立腺がんの術後は極端な例でしたが、健康な人でも、勃起をしないでいると海綿体の柔軟性が失われていくのは同じです。
ですので、勃起力を維持するためには、日々勃起して海綿体の柔軟性を維持することが重要です。
実際に、前立腺がんの術後の患者では、ポンプや勃起薬を用いて、陰茎を強制的に勃起させる「陰茎リハビリ」が行われることがあります。術後早期の陰茎リハビリによって、線維化が予防され、リハビリを行わなかった場合と比較して、勃起能力やサイズが維持されやすいことが、多数報告されています[3-6]。
勃起をすればするほど、海綿体がストレッチされて柔軟性が保たれ、勃起力の維持に繋がります。積極的にセックスやマスターベーションを行って、勃起力の維持に勤めましょう。
朝立ち(朝勃ち)は勃起のメンテナンス
ここでまた話はそれますが、皆さん、朝立ち(朝勃ち)はしていますか?
男性の体は、就寝中のレム睡眠の時間帯に勃起するようにできており、この睡眠中の勃起を「夜間勃起」と呼びます。一般的にレム睡眠は明け方に多くなるので、夜間勃起も明け方に多く生じています。そして、この状態で目が覚めたときに起きているのが「朝勃ち」です。
つまり、就寝中には勝手に海綿体に血が流され、ストレッチが行われるので、「朝勃ち」は勃起力を維持するための、体のメンテナンス機能だと言えます。
逆に、「最近朝勃ちしないな」と思ったら要注意です。セックスやマスターベーションもほとんどせず、朝勃ちもなくなった場合、勃起する機会がまったくないことになるので、海綿体の線維化が進行し、勃起力がどんどん衰えていきます。
朝勃ちが弱くなったな、という自覚がある人は特に積極的に、日頃から勃起する機会を作るようにしましょう。
射精は前立腺がんの予防にも
今回は勃起の話でしたが、射精をすると前立腺がんの予防にもなると言われています。
具体的には、月21回以上射精をしている男性は、それ以下の男性と比較して、前立腺がんが発見されるリスクが有意に低いことが報告されています[7]。
日常的なセックスやマスターベーションは、勃起力の維持と前立腺がんの予防が同時にできる、まさに男性のための健康維持法と言えるでしょう。
まとめ:日々勃起して陰茎の健康を守ろう
勃起機能を維持するためには、日々勃起して陰茎海綿体の柔軟性を保つことが大切です。逆に勃起しないでいると海綿体は硬くなってしまい、一度失った勃起力を取り戻すことは難しいでしょう。末永く勃起力を維持したいのであれば、ぜひ積極的にセックスやマスターベーションを行い、陰茎のメンテナンスに努めましょう。
【参考/出典元】
[1]Mr.BIG SHOP ペニス解剖学
[2]東京慈恵会医科大学 泌尿器科
[3]Hoyland, Kimberley, Nikhil Vasdev, and James Adshead. "The use of vacuum erection devices in erectile dysfunction after radical prostatectomy." Reviews in urology 15.2 (2013): 67.
[4]Köhler, Tobias S., et al. "A pilot study on the early use of the vacuum erection device after radical retropubic prostatectomy." BJU international 100.4 (2007): 858-862.
[5]Yuan, J., et al. "Vacuum therapy in erectile dysfunction—science and clinical evidence." International journal of impotence research 22.4 (2010): 211-219.
[6]Lin, Hao-Cheng, et al. "Penile rehabilitation with a vacuum erectile device in an animal model is related to an antihypoxic mechanism: blood gas evidence." Asian journal of andrology 15.3 (2013): 387.
[7]Rider, Jennifer R., et al. "Ejaculation frequency and risk of prostate cancer: updated results with an additional decade of follow-up." European urology 70.6 (2016): 974-982.
<この記事の監修>
福元メンズヘルスクリニック 院長
福元 和彦(医師)
■泌尿器科医 ■性機能学会専門医 ■抗加齢医学会専門医 ■排尿機能学会認定医
福元メンズヘルスクリニック
<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!