勃起の筋トレ 骨盤底筋トレーニングで勃起力を改善させよう
ED(勃起不全)の改善には、勃起薬の服用が一般的です。しかし勃起薬は対症療法であり、根本的な勃起力を向上させる方法ではありません。今回は、自宅で手軽に行える勃起力の向上方法として「骨盤底筋トレーニング」を紹介します。
目次
骨盤底筋とは
骨盤底筋と勃起の関係
骨盤底筋トレーニングによる勃起の改善効果
骨盤底筋トレーニングと勃起薬の改善効果の比較
骨盤底筋トレーニングの方法
骨盤底筋の位置・動きの確認
骨盤底筋をトレーニングする
まとめ:骨盤底筋のトレーニングで勃起力を向上させよう
骨盤底筋とは
まず「骨盤底筋」とは、骨盤の底部に付着しているハンモック状の筋肉群を指し、球海綿体筋などの筋肉で構成されています。
(右側は[1]より改変 1:球海綿体筋、2:坐骨海綿体筋、5:肛門挙筋、8:外肛門括約筋(他省略))
骨盤底筋の平時の役割は、姿勢の維持や内臓の支持、排便・排尿のコントロールです。
これらに加え、複数の動物実験から、骨盤底筋が勃起の維持にも重要であることが報告されています[2]。
骨盤底筋と勃起の関係
陰茎が勃起するためには、陰茎海綿体が充血する必要があります。
骨盤底筋(特に球海綿体筋や坐骨海綿体筋)の収縮によって、陰茎海綿体の根本が圧迫されて海綿体の内圧が上昇し、勃起の維持に繋がると考えられています。
([3]より引用)
<参考>
勃起の仕組み 勃起力の維持方法と朝立ち(朝勃ち)の意義
実際に2001年に香川の高松赤十字病院で実施された研究では、ED患者と比較して、健常者で骨盤底筋の収縮力が高かったことが報告されました[4]。
この研究では、健常者21名とED患者97名の陰茎にバネばかりを装着し、骨盤底筋の収縮による、引張長さ(負荷:100 g)、引張の持続時間(負荷:500 g)、最大張力 の3項目が測定されました。
([4]より改変)
その結果、ED患者と比較して健常者で全ての項目の数値が有意に高いことが確認されました。
骨盤底筋の筋力低下が、勃起力の低下に関係していると言えそうです。
([4]より改変 中央値及び四分位範囲 *P<0.05, **P<0.01)
骨盤底筋トレーニングによる勃起の改善効果
では次に、骨盤底筋のトレーニングが、EDを改善させるかどうかを見ていきましょう。
2004年のイギリスの研究チームによる研究では、3ヵ月間の骨盤底筋体操で、EDの有意な改善が報告されました[5]。
([5]より改変 平均値及び四分位範囲 *P<0.001)
トレーニング群には、喫煙や運動などの生活習慣の改善と、日常生活での骨盤底筋トレーニングの実施が指示されました。
一方コントロール群では、最初の3ヵ月間は生活習慣の改善のみが指示され、骨盤底筋トレーニングは4ヵ月目から開始されました。
骨盤底筋トレーニングの実施によって、勃起力のスコアが改善していることが分かります。
骨盤底筋トレーニングと勃起薬の改善効果の比較
([6]より改変)
骨盤底筋トレーニングと勃起薬(シルデナフィル)の改善効果を比較した研究によると、それぞれの改善量は、骨盤底筋トレーニングで8点、勃起薬で10点でした。
勃起薬には及びませんが、骨盤底筋トレーニングでもそれに近しい改善があることが分かります。
骨盤底筋のトレーニング方法
骨盤底筋のトレーニングは、「骨盤底筋体操」や「ケーゲル体操」という呼称で、尿失禁や骨盤臓器脱のある女性に対してよく適用されます。
道具は不要で、自分の意思で骨盤底筋をグッと収縮させる運動によって、骨盤底筋を鍛えることができます。
女性によく推奨される骨盤底筋体操ですが、男性が実施してもOKです。
では最後に、この骨盤底筋体操の方法を紹介します。
骨盤底筋の位置・動きの確認
他の多くの筋力トレーニングと同様、骨盤底筋体操でも、動かす筋肉(骨盤底筋)をしっかり意識しながら行うことが重要です。
まずは以下を参考に、骨盤底筋の位置、および収縮させる感覚を確認しましょう。
<骨盤底筋の確認手順>
- 放尿中、尿を止める時に力が入る筋肉が骨盤底筋
- 座った状態で肛門をキュッと締め、肛門と陰茎の付け根の間の部分(会陰)に力が入れば、それが骨盤底筋
- ②の動きをした時に陰茎も一緒にピクピクと動けば、正しく力を入れられている
①~③を行ってもよく分からない場合は、骨盤底筋を直接触って確認しましょう。
イスに座り、手のひらを上向きにしてお尻の下に入れます。この際肛門が手のひらの真ん中に来るようにします。
この状態で骨盤底筋を正しく収縮できると、中指の辺りに圧迫を感じることができます。
一方、いきみ(腹筋に力を入れる)や臀部全体に力を入れるなどの間違った収縮をした場合、中指ではなく手のひら全体に圧迫を感じます。
骨盤底筋をトレーニングする
骨盤底筋を正しく収縮できるようになったら、この収縮運動を、日常生活の中でなるべくたくさん行いましょう。
姿勢は座位、立位、仰臥位(仰向け)など、何でも大丈夫です。
ゆっくり呼吸しながら、骨盤底筋をギューッと5秒間収縮し、緩める、また収縮し、緩める動きを10回、これをまずは1日3セット行いましょう。
慣れてきたら5セット、10セットと数を増やしていきます。
収縮と収縮の間には、時間をかけてもよいので、しっかりと骨盤底筋を緩めることが重要です。
緩め方がよく分からない場合は、肛門の周辺全体を弛緩させるイメージで力を抜きましょう。
骨盤底筋体操は場所を選ばず行えます。
デスクワークの合間や、信号待ちの時間など、日常生活の隙間時間で取り組んでみましょう。
まとめ:骨盤底筋のトレーニングで勃起力を向上させよう
骨盤底筋トレーニングは、勃起力を鍛えられる数少ない方法の一つです。また、骨盤底筋は勃起だけでなく、射精や排泄の制御にも重要です。ぜひ日頃から骨盤底筋を鍛え、男性機能の健康維持に努めましょう。
すぐに勃起力を改善したい方へ
骨盤底筋のトレーニングは効果を実感するまでに少し時間がかかります。効果を感じられるまでは、対症療法としてED薬の服用をおすすめします。
イーストクリニックは全国で40院以上を展開しているED治療をメインとしたクリニックです。
40院のほとんどが主要駅から徒歩5分以内と、好立地がとても魅力的です。
また、お薬代以外の初診・再診料が無料というのも、継続して通いやすい点になります。
骨盤底筋のトレーニングにも言えますが、ED治療は継続することが重要です。
ぜひ、お住いの場所から通いやすいクリニックを見つけてみてください。
【参考/出典元】
[1]Cohen, Deborah, Joshua Gonzalez, and Irwin Goldstein. "The role of pelvic floor muscles in male sexual dysfunction and pelvic pain." Sexual medicine reviews 4.1 (2016): 53-62.
[2]Dobberfuhl, Amy D., et al. "Identification of CNS neurons innervating the levator ani and ventral bulbospongiosus muscles in male rats." The journal of sexual medicine 11.3 (2014): 664-677.
[3]Mr.BIG SHOP ペニス解剖学
[4]Kawanishi, Y., et al. "Spring balance evaluation of the ischiocavernosus muscle." International journal of impotence research 13.5 (2001): 294-297.
[5]Dorey, Grace, et al. "Pelvic floor exercises for erectile dysfunction." BJU international 96.4 (2005): 595-597.
[6]Dorey, Grace, et al. "Randomised controlled trial of pelvic floor muscle exercises and manometric biofeedback for erectile dysfunction." British Journal of General Practice 54.508 (2004): 819-825.
<この記事の監修>
福元メンズヘルスクリニック 院長
福元 和彦(医師)
■泌尿器科医 ■性機能学会専門医 ■抗加齢医学会専門医 ■排尿機能学会認定医
福元メンズヘルスクリニック
<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任 牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!