女性の脚ピン(足ピン)オナニーについて 

​​注)「ちつ」の解剖学的に正しい表記は「腟」ですが、この記事では一般的な表記である「膣」を使用します。

「女性のオナニー(マスターベーション)」と聞いて、どのような体勢を想像しますか。

その日の気分によって体勢を変える方もいれば、自分が1番気持ち良いと思うベストポジションを定めている方もいると思います。好みは人それぞれですが、マスターベーションの「適切な体勢」を知らない方は多いのではないでしょうか。

今回は、さまざまなマスターベーションの中でも、脚を真っ直ぐにした体勢で行う「脚ピン(足ピン)オナニー」について紹介します。

脚ピンは医学的に十分検証されていない分野ですが、今回はその仕組みや注意点、治し方を紹介します。脚ピンは、一般的に不適切な方法とされていますが、その他の「女性のマスターベーションの不適切な方法」については、以下の記事を参考にしてください。

〈参考〉女性のマスターベーションの不適切な方法

目次

脚ピン(足ピン)オナニーとは
脚ピン(足ピン)でオーガズム(オルガズム)に達する仕組み
 ①クリトリスで得られる快感を高める
 ②仙骨神経に刺激を与える
 ③骨盤底筋の収縮を強める
脚ピン(足ピン)の仕組みについて専門医に聞いてみた
脚ピン(足ピン)オナニーの方法
脚ピン(足ピン)オナニーの注意点
脚ピン(足ピン)オナニーの治し方

まとめ:脚ピン(足ピン)をするときはデメリットも理解して

脚ピン(足ピン)オナニーとは

脚ピンとは、文字通り、太ももに力を入れ、両脚をピンッと真っ直ぐに伸ばした状態のことです。「脚ピンオナニー」は、この状態で行うマスターベーションです。

脚ピンイメージ画像

脚ピンオナニーは、仰向け、うつ伏せ、横向き等さまざまな姿勢で可能です。座りながら行う女性もいます。

脚ピン(足ピン)でオーガズム(オルガズム)に達する仕組み

では次に、脚ピンオナニーの仕組みについて考えてみます。「脚ピンじゃないとイケない」という女性(筆者もその1人です)も少なくないと思いますが、なぜ脚ピンは気持ち良いのでしょうか。

前述の通り、脚ピンオナニーは医学的に十分検証されておらず、その仕組みは完全には解明されていませんが、筆者の経験と監修医の知見をあわせ、脚ピンが気持良い(オーガズムに達しやすい)理由について、3つの説を紹介します

①クリトリスで得られる快感を高める

女性がマスターベーションでオーガズム(オルガズム)に達するには、一般的にクリトリスか膣内への刺激が必要です。

通常、皆が「クリトリス」と呼んでるのは、体表に露出している陰核亀頭(下図の赤い部分)ですが、実はそれはクリトリスの一部にすぎず、その本体は膣を挟み込むように2本の脚部(陰核脚)があり、そこも性感帯になっています。

膣内の刺激で得られる快感の一部は、この陰核脚への、膣壁越しの刺激によるものだと考えられます。

クリトリス図解

[1]より改変

脚ピンをすると、骨盤周辺の筋肉が収縮し、体内の陰核脚が圧迫されます。これが性的快感に繋がっているのではないかと推測されます。

②仙骨神経に刺激を与える

前述の理論に則ると、脚ピンでは「太ももと骨盤周辺の筋肉に力を入れれば、クリトリス(陰核脚)が圧迫されやすくなり快感が得られる」ということになるので、つま先まで力を入れる必要はないように思えます。しかし実際は、太ももだけでなく足のつま先まで力を入れる方が多いのではないでしょうか。

この理由を解剖学的に考えると、つま先の筋収縮によって、仙骨(骨盤の中心にあり、背骨を支える土台の骨)の神経が刺激され、それがオーガズムに達する手助けになっている可能性があります[2]。

筋肉の収縮と皮膚感覚は脊髄(神経)によって支配されており、どの身体領域が脊髄のどの領域に支配されているかは、解剖学的に明らかになっています。この支配関係を表しているのがデルマトームと呼ばれる図です。

筋肉の収縮と皮膚感覚についての図解1筋肉の収縮と皮膚感覚についての図解2
デルマトーム [3]より引用

③骨盤底筋の収縮を強める

最後は、脚ピンはオーガズムに達しやすいだけでなく、より大きな快感を得ることにも繋がっているのではないかという説です。

通常オーガズム中は骨盤底筋と呼ばれる筋肉が、リズミカルに収縮と弛緩を繰り返しています。

脚ピンの体勢をとると骨盤底筋とその付近の筋肉も強く収縮しているので、その状態でオーガズムに達すると、骨盤底筋の筋肉の動きも大きくなり、より大きな快感を得られると考えられます。

脚ピン(足ピン)の仕組みについて専門医に聞いてみた

これらの説について、婦人科専門医の宮本亜希子先生にご意見を伺いました。(先生のプロフィールは記事の最後を参照)

オーガズムの中枢は仙髄(仙骨の神経)にあります。

女性はオーガズムの時に骨盤底筋が収縮しますが、骨盤底筋群とは恥骨尾骨筋や尿道括約筋、肛門括約筋などいくつかの筋肉から成り立っており、それらは陰部神経に支配されています。

陰部神経は仙骨神経(S2−4)の前枝から構成されているので、脚ピンをすることにより、骨盤底筋群を支配するのと近い神経支配の筋肉が同時に収縮するため、より一層強い快感を得られるのかもしれません。

また一般的に、女性が性的興奮を感じると、陰核と前庭球の海綿体に血液が充満し、陰核と前庭球が勃起状態となり、体積が増加します。

前庭球は膣壁と陰核の間に位置しているので、膣壁からの(手マンや陰茎のピストン運動による)刺激は、この勃起した前庭球を介して陰核に伝わり、快感が増大していきます。

また、膣内腔も勃起した陰核脚と前庭球と骨盤底筋の筋収縮によって、より狭くなります。そして勃起した前庭球は隣接するバルトリン腺(大前庭球腺)を圧迫し、バルトリン腺液が分泌され膣を潤わせます。

ここで脚ピンをすると、骨盤底筋群のひとつである坐骨海綿体筋が収縮し、陰核と前庭球の海綿体により血液が充満しやすくなります。これも脚ピンがオーガズムに達しやすくなる一因になっているのではないかと考えます。

また余談ですが、骨盤底筋を鍛えておくと尿漏れや骨盤臓器脱の予防になるだけでなく、オーガズム時の筋収縮が大きくなり、得られる快感も大きくなると考えられます。

脚ピン(足ピン)オナニーの方法

脚ピンの状態で、どのようにマスターベーションを行うのか、脚ピンオナニーの方法を紹介します。

通常寝た姿勢で、お尻の筋肉(大腿筋)や太ももの筋肉(内転筋・大腿四頭筋・大腿二頭筋)を強く収縮させて、脚同士をくっつけるようにします。

姿勢は、仰向け、うつ伏せ、横向きと、個人によって異なります。ちなみに筆者は子どもの頃から、右側を下にした横寝で脚ピンをします。今ではうつ伏せの脚ピンでもオーガズムできるようになりましたが、左側下の横寝では困難です。

脚をくっつけるだけでなく、脚を絡ませて足の甲同士をひっつけるようにする方もいます。

脚周りの筋肉の図解
[3]より改変

指や道具を使って自分の好きな性感帯を刺激して、オーガズムに達しそうになった時に、つま先をさらに伸ばしたり、力を強めたりすることもあります。また、オーガズムの直前だけ脚ピンをする方もいます。

ちなみに、手を使わずに脚ピンだけで、オーガズムに達することができる人もいます(筆者はそうです)。

脚ピン(足ピン)オナニーの注意点

脚ピンは、マスターベーションでオーガズムに達しやすくなるというメリットと引き換えに、セックスでオーガズムに至りづらくなるというデメリットやリスクがあります。これが、脚ピンが不適切なマスターベーションとされる理由です。

脚ピンでのマスターベーションに慣れていると、正常位やバックなどの脚を曲げた状態では、オーガズムに達しにくくなってしまいます

「セックスでイクにはどうすれば良いのだろう」と悩んでいる方には、脚ピンのマスターベーションは推奨しません。

脚ピン(足ピン)オナニーの治し方

脚ピンを治したい方は、脚ピンを止め、脚ピンしない状態でのマスターベーションに慣れることが重要です。

脚の力を抜いて適度に曲げた状態でのマスターベーションに慣れていきましょう。脚に力を入れずにリラックスできているかが重要です。例えば、胡座(あぐら)や、足の裏をくっつけて菱形を作った体勢も良いと思います。

また、普段のセックスの体位に近い体勢で、マスターベーションすることも効果的です。

まとめ:脚ピン(足ピン)をするときはデメリットも理解して

最後に、筆者の体験を少し紹介します。

筆者の場合、脚ピンでオーガズムに達する場合と、脚ピンしないでオーガズムに達する場合で、大きな差を感じています。

オーガズム中の下腹部のビクビクとした痙攣を、脚ピンしたときの方が大きく感じることができるのです。

オーガズムの快感の強さは、脚ピンしたときの方が倍以上と言っても過言ではありません。性的快感を大きく得たことでオーガズム後の余韻も長くなるので、よりスッキリした気持ちになれます。

ただ、脚ピンにはセックスでオーガズムに達しにくくなるというデメリットもあります。

筆者自身も、セックスでの挿入中、寝バックの姿勢(=脚ピンができる)であれば割と簡単にオーガズムに達せられますが、それ以外の姿勢ではなかなかオーガズムに至れないことがあります。

オーガズムに達する方法はいくつあっても良いですが、皆さんも脚ピンを取り入れる際は、リスクも理解しておこなってくださいね。

【参考文献】
[1]オナニーでどうやったらイクの?イクってなに?/セイシル
[2]【女の足ピン、男の中折・勃起力】性交痛外来 女医が視聴者の質問にお答えします!/女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室
[3]デルマトームをわかりやすく徹底解説/日本終末期ケア協会
[4]ブルガリアンスクワットの正しいやり方・効果/Shop Japan

<この記事の監修>
宮本亜希子先生_プロフィール画像

宮本亜希子先生
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
日本女性心身医学会 認定更年期指導士
AVプロダクションMine's顧問医師

【所属学会】
・日本産婦人科学会
・日本性科学会
・日本美容医学会(JSAS)
・日本女性骨盤底学会
・日本生殖医学会

2006年兵庫医科大学卒業。
現在女性医療クリニックLUNAスワンクリニック銀座シェリークリニック新宿院と分娩取扱クリニックで勤務。
専門は産婦人科全般で周産期、婦人科美容、アンチエイジングなど女性の悩みに寄り添う。性教育やHPVワクチンの普及、女性のQOLの向上にも尽力。
3児の母でもあり、自身の経験を生かし、診療やメディア活動も行なっている。
女性医療クリニックLUNAでは2024年、より良い性やSEXのための外来を開設予定。

 

<著者プロフィール>

福田眞央 TENGAヘルスケア

TENGAヘルスケア 教育事業部
福田 眞央(ふくだ まお)
平成6年生まれ。保健体育科教員として高等学校に勤めた後に大学院に入り、ジェンダー学・性教育を専攻。2021年より株式会社TENGAヘルスケアに携わり、主に性教育WEBサイト「セイシル」を活用した教材作成に取り組む。
みなさんの心と身体の健康をサポートできるような情報を発信していきます!

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