デリケートゾーン(陰部)のかゆみの原因と抑える方法 | 医師監修
注)「ちつ」の解剖学的に正しい表記は「腟」ですが、この記事では一般的な表記である「膣」を使用します。
デリケートゾーン(陰部)は、皮膚が薄く、刺激を受けやすい部分です。
そのため、かゆみなどの肌トラブルが起きやすく、また、かゆみが出てもすぐにケアできる部分ではないため、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、なおえビューティークリニック院長 喜田直江医師監修のもと、女性のデリケートゾーンのかゆみの原因と、つらいかゆみを今すぐ抑える方法を解説します。
<この記事の監修>
喜田直江医師
なおえビューティークリニック 院長
【所属学会】
日本形成外科学会会員
日本性科学会会員
日本抗加齢医学会会員
ビビーブ認定医
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平成13年 京都府立医科大学卒業後、産婦人科医として多数の分娩・手術症例を経験。
平成15年 形成外科医として、形成外科の基本から縫合の技術まで幅広く習得。
平成18年 大手美容外科にて美容外科・美容皮膚科全般を習得。とくに婦人科系の美容手術は、日本でも有数の症例数を誇る。
平成23年10月、東京銀座でなおえビューティークリニックを開院。美容婦人科治療専門クリニック。
TV、雑誌など多数のメディアに出演中。日本形成外科学会会員、日本性科学会会員、日本抗加齢医学会会員、ビビーブ認定医、ウルトラヴェラ認定医。
デリケートゾーン(陰部)のかゆみの原因
デリケートゾーンにかゆみが出る原因は、主に2つで、かぶれが起きているか、感染症にかかっているかです。
詳しい内容を説明します。
かぶれが起きている
デリケートゾーンにかぶれが起きて、かゆみにつながっている場合があります。
かぶれは正式には「接触皮膚炎」と呼ばれます。デリケートゾーンのかぶれは、肌に接触する下着や衣類の締め付け、生理中のナプキンやおりものシート、タンポンなどが刺激となって起こることが多いです。
下着の繊維やコンドームの素材が合わず、アレルギーを起こしてかぶれがでる場合もあります。
また、更年期や体調の変化によっ女性ホルモンのエストロゲンが減少すると、デリケートゾーンが乾燥し、かぶれにつながります。
感染症にかかっている
デリケートゾーンのかゆみの他に、性器が赤くなっていたり、痛みを感じる、ブツブツやイボイボがある、おりものの状態に異変がある場合(量が増える、ニオイが気になるなど)、感染症にかかっている可能性があります。
性交渉などによって、ウイルス、細菌、真菌(カビ)、原虫、毛じらみなどに感染し発症します。
また、性交渉だけでなく、公衆浴場・トイレなどの公共施設などでうつる感染症もあります。
デリケートゾーンのかゆみが症状に現れる感染症は下記です。
性感染症の可能性もあるため、ご自身だけでなくパートナーにも異変が起きていないかを確認すると良いでしょう。
病名 | 病原体 | 女性の主な症状 | 感染経路 |
性器カンジダ症 | カンジダ(真菌) | ・おりものがヨーグルト、酒粕状になる ・膣・肛門のかゆみ |
・性交渉 ・ストレス・疲労など免疫力の低下で常在菌の「カン ジダ菌」が増殖することで発症する |
いんきんたむし | 白癬菌(真菌) | 太もも、性器から肛門周辺に強いかゆみ、湿疹が出る | ・性交渉、公共施設 ・感染者の皮膚から剥がれ落ちた角質に触れるだけでも感染することがある |
膣トリコモナス | 膣トリコモナス(原虫) | ・おりものから悪臭がする ・おりものの量が増加 |
・性交渉、公共施設 ・タオルやシーツを介して感染することもある |
毛ジラミ症 | 毛ジラミ(昆虫) | ・陰毛に付着するため陰毛周辺に強いかゆみ ・無症状の場合がある |
・性交渉、公共施設 ・タオルやシーツを介して感染することもある |
細菌性膣症 | 膣の中で細菌が増殖して発症する | ・おりものから悪臭がする ・おりものの量が増加 ・膣内、女性器が痛痒い ・性交痛や不正出血がある場合も |
・膣内環境の乱れ ・過度の性行為や不衛生な状態での性行為 |
性感染症は、自然治癒は難しいものが多く、放置すると悪化していく恐れもあります。少しでも気になる症状があれば、必ず医療機関を受診しましょう。
また、性器カンジダ症や細菌性膣症は、膣内環境の乱れによって発症しやすくなります。予防には、デリケートゾーンを衛生的に保つだけでなく、内側からのケアを心がけることも大切です。
下記の記事で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
【関連記事】細菌性膣症とは?その症状や原因を解説
https://tengahealthcare.com/column/post-9078/
デリケートゾーン(陰部)のかゆみを抑える方法
デリケートゾーン(陰部)のかゆみを抑える方法を紹介します。
応急処置となるので、かゆみが収まらない場合は、悪化させないためにも放置せずに医療機関を受診してください。
1.シャワー+専用ソープで清潔な状態にする
デリケートゾーンが汗や分泌物などで不衛生な状態だと、雑菌の温床となり、かゆみをさらに悪化させる可能性があります。
シャワーを浴びて、デリケートゾーンの汚れを洗い流しましょう。この時、デリケートゾーンを洗いすぎないように注意してください。
必要な皮脂まで洗い流されてしまうと、皮膚が乾燥しやすい状態になり、かゆみを悪化させてしまいます。
また、デリケートゾーンをボディソープなどの洗浄力が強いもので洗わないようにしましょう。
皮膚への刺激が強いだけでなく、膣内の常在菌まで洗い流してしまう可能性があるためです。
常在菌が少なくなると自浄作用が低下するため、雑菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎や細菌性膣炎などのデリケートゾーンのトラブルにつながる場合があります。
かゆみが気になるときには、シャワーでさっと洗い流すか、デリケートゾーン専用のソープを使用して清潔な状態にしましょう。
デリケートゾーン専用のソープやケアアイテムについては、下記で紹介しています。ぜひ参考にしてください。
【関連記事】デリケートゾーンケアは何をすべき? 洗い方・保湿方法からおすすめアイテムまで紹介 | 医師監修
https://iroha-tenga.com/contents/research/16947/
2.締め付け・刺激の少ない下着や衣類を身につける
デリケートゾーンを清潔にしても、通気性が悪くムレを感じる状態だと、かゆみはなかなか解消されません。締め付け・刺激の少ない下着・衣類を身につけるようにしましょう。
また、ナプキンやおりものシート、タンポンなども肌への刺激が少なく、ムレやベタつきが抑えられるものを使用すると良いでしょう。
また、月経カップや吸水ショーツなど、生理用品も進化しているので、試してみるのも良いです。
3.市販薬を使用する
デリケートゾーンに使える市販薬を使用することで、かゆみを抑えられる場合があります。
抗ヒスタミン成分が配合されているものだと、かゆみの抑制が期待できます。
ステロイドを含んだ市販薬の使用を検討する場合には、必ず病院か薬剤師に相談してください。
デリケートゾーン(陰部)のかゆみの予防方法
慢性的に繰り返すデリケートゾーン(陰部)のかゆみにお悩みの方も多いのではないでしょうか。
デリケートゾーンのかゆみを予防する方法について解説します。
デリケートゾーンを清潔な状態に保つ
デリケートゾーンには、汗や分泌物、おりものや生理中の経血などさまざまな汚れが付着しています。
汚れをそのままにしておくと、肌がかぶれやすく、感染症の原因となる雑菌が繁殖しやすい環境になります。
かゆみを予防するためにも、デリケートゾーンはできる限り清潔な状態を保ちましょう。
汚れが気になったらシャワーで洗い流したり、デリケートゾーン専用の拭き取り用シートの使用もおすすめです。
また、ナプキンやおりものシート、タンポンなどもこまめに取り替えるようにしましょう。
経血量が多い時には、2〜3時間おきくらい、少ない時でも4~5時間おきには取り替えるのが望ましいとされます。
日頃から肌に刺激の少ないものを身に着ける
デリケートゾーンのかゆみ予防は、一時的ではなく日頃から行いたいところです。日常的に肌に直接触れるものは、低刺激のものを選ぶようにしましょう。
下着は通気性の良い綿素材がおすすめです。また、締め付けが強いと肌への刺激になります。タイトな下着や服装は避けると良いです。
また、下着の繊維やコンドームも素材でアレルギーを起こしているケースもあるので、いつも使用しているものを見直し、別の素材も試してみましょう。コンドームは、ポリウレタン製のものだとアレルギーを起こしにくいです。
感染症対策を行う
デリケートゾーンのかゆみの原因の一つである「性感染症(STD)」は、コンドームを正しく使用することである程度は防げます。
性感染症の可能性が少しでもあれば、医療機関で検査を受けましょう。
また、性感染症に感染していた場合は、パートナーと共に治療を受けてください。一方が感染した状態では、治療をしても感染を繰り返す可能性があるためです。
食品・サプリでインナーケアを行う
膣内環境を整えることも、デリケートゾーンのかゆみ対策になります。
膣内にはさまざまな細菌が存在し、膣内環境(膣内フローラ)を形成しているのですが、その中でも重要なるのが「乳酸菌」です。
乳酸菌が生産する乳酸が膣内を酸性に保ち、かゆみの原因となる雑菌の侵入や悪玉菌の増殖を防ぎます。乳酸菌の量が増えれば、膣内環境を整えることにもつながります。
膣内環境を酸性に保ち、正常な状態に整えるためには、膣内フローラを形成する乳酸菌(ラクトバチルス属)を食品やサプリメントで体内に摂取することが有効です。
発酵食品、食物繊維やオリゴ糖が含まれた食品類は、膣内フローラを形成する乳酸菌(ラクトバチルス属)のエサとなるので、これらの摂取もおすすめです。
膣内フローラや膣内環境について、より詳しい情報は下記をご覧ください。
【関連記事】デリケートゾーンケアには乳酸菌?「膣内フローラ」について解説
https://tengahealthcare.com/column/post-9117/
【関連記事】膣内環境チェック デリケートゾーンの状態を知ろう!
https://tengahealthcare.com/column/post-8875/
デリケートゾーンのかゆみは予防も忘れずに
デリケートゾーンは、皮膚が薄く、少しの刺激でもかぶれを起こしやすい部位です。
デリケートゾーンのかゆみを繰り返さないためにも、紹介した予防方法もぜひ参考にしてみてください。
また、デリケートゾーンのかゆみの陰には感染症の可能性もあります。気になる場合は医療機関を受診するようにしましょう。
〈著者プロフィール〉
TENGAヘルスケア 綿来美紀(わたらい みき)
平成7年生まれ。女性向けWebメディアにてコンテンツ制作に従事したのち、男女問わずより多くの方の悩みを解決したいと考え、2024年2月よりTENGAヘルスケアに入社。
TENGAヘルスケアのコラムを通じてみなさまのお悩みを少しでも解決できればと考えています。いつでもご相談お待ちしています!
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