2023.06.01

【基礎&実践】女性の骨盤底筋トレーニング(骨盤底筋体操、ケーゲル体操)

骨盤底筋は女性の健康において、非常に重要な役割を持ちます。骨盤底筋を鍛えることで、特に女性は様々な恩恵を得られますが、その一番メジャーな方法が「骨盤底筋トレーニング」です。

骨盤底筋トレーニングは、方法自体は非常に簡単ですが、適切な実施と継続には意外と高いハードルがあります。今回は骨盤底筋トレーニングを適切に実施&継続するための、基礎知識とコツを解説していきます。

目次

骨盤底筋トレーニングとは
骨盤底筋トレーニングの効果
骨盤底筋トレーニングの実践方法
 骨盤底筋トレーニングの実践①骨盤底筋の動かし方
 骨盤底筋トレーニングの実践②頻度・回数・場所
 骨盤底筋トレーニングの実践③継続する
注意:妊娠中の骨盤底筋トレーニング
まとめ:骨盤底筋トレーニングで健やかな生活を

骨盤底筋トレーニングとは

女性 尿失禁

「骨盤底筋」とは、骨盤の底部にハンモックのように付着している筋肉で、日々の生活の中で非常に重要な役割を果たしています。

〈参考〉 骨盤底筋とは

「骨盤底筋トレーニング」とは、文字通り、この骨盤底筋のトレーニングを意味します。
骨盤底筋トレーニングには、広義には器具を使用したり、他の手法と組み合わせて実施する方法も含まれますが、基本的には道具は使用せず、自身の意思で骨盤底筋をキュッと収縮(随意収縮)させる方法を指します。

この随意収縮での骨盤底筋トレーニングは、「骨盤底筋体操」や「ケーゲル体操」と呼ばれることもあり、これらは同義です。
また、「膣トレ」と言う言葉も、多くの場合、この骨盤底筋トレーニングを表しています。

骨盤底筋トレーニングの効果

骨盤底筋には様々な役割がありますが、特に医学的に証明されている機能は、排尿のコントロール(尿禁制)です。

つまり、骨盤底筋の機能不良(筋力や柔軟性の不足)は、尿失禁に繋がり、逆に機能向上によって、尿失禁の改善や予防が期待できます。

骨盤底筋の機能向上には幾つかの方法がありますが、その王道となるのが骨盤底筋トレーニングです。

女性の尿失禁治療においては、骨盤底筋トレーニングは「治療の第一選択肢」と位置づけられ、実施の推奨度も「グレードA(実施するよう強く勧められる)」とされています[1]。

女性の尿失禁は主に2つのタイプがありますが、骨盤底筋トレーニングはそのどちらにも有効で、副作用はほとんどないとされています。

実際、腹圧性尿失禁の女性患者に8週間の骨盤底筋トレーニングを実施してもらった所、約8割の女性で尿失禁の頻度が半分以下になったと報告されています[2]。

骨盤底筋トレーニングの尿失禁改善効果を支持する研究は多数ありますが、総合すると約3ヵ月間の継続実施で、7-8割の女性で尿失禁の症状軽減が期待できると考えられています。

骨盤底筋トレーニングの実践方法

ではいよいよ、骨盤底筋トレーニングの実践方法を説明します。
先述の通り、骨盤底筋トレーニングに道具は不要で、やり方も「自分の意思で骨盤底筋をキュッと収縮させる」だけです。

ですので重要な点は3つ、①骨盤底筋を正しく動かせるか、②どのような頻度・回数・タイミングで実施するか、そして③トレーニングを継続できるか、です。

骨盤底筋トレーニングの実践①骨盤底筋の動かし方

最初にして最大のポイントが、骨盤底筋を正しく動かせるようにすることです。動かし方が分からない人や自信がない人は、まずはここで正しい動かし方を把握しましょう。

動かし方確認手順1 仰向けで寝る

骨盤底筋 トレーニング ケーゲル体操 女性 尿漏れ

コツを掴めば、骨盤底筋はどのような姿勢でも収縮可能ですが、初心者の場合、仰向けで脚を軽く広げ、膝を立てた姿勢がオススメです。この姿勢では内臓の重量がかからないため、骨盤底筋に力を入れやすいと考えられています。

動かし方確認手順2 力を入れてみる

骨盤底筋 トレーニング ケーゲル体操 女性 尿漏れ

仰向けのまま、自然に呼吸をしながら、膣と尿道、肛門を締めるイメージで力を入れます。力の入れ方は、放尿中に尿を途中で止めたり、おならを我慢するときと同じです。膣、尿道、肛門全体を体内に引き込むイメージで動かす所までできると完璧です。

骨盤底筋に力を入れて、腹部や臀部(お尻)に力が入っている場合、それは間違った収縮方法です。特に腹部に力の入る「いきみ」は、排便する際のような動きで、骨盤底筋の収縮とは真逆の動きです。「いきみ」をすると腹圧が高まって骨盤底筋に上から圧がかかるので、寧ろ骨盤底筋を傷めてしまう可能性もあります。骨盤底筋の収縮に慣れるまでは、お腹やお尻に手を当て、力が入っていないことを確認しながら実施しましょう。

動かし方確認手順3 正しく動かせているかを確認する

手順2で正しく動かせているか自信が持てない場合は、指を膣に挿入して締められている感覚があるかを確認しましょう。力を感じなかったり、指が押し戻される場合は、正しく収縮できていません。もし上手くいかない場合は、指を挿入したまま、骨盤底筋の動かし方を試行錯誤して、コツを掴んでいきます。この際、全身はリラックスさせ、膣、尿道、肛門を意識しながら行うのが良いでしょう。

動かし方確認手順4 動きを感じない場合

手順3を実施しても収縮できている感覚が得られない場合、骨盤底筋が固いか筋力が不足している可能性があります。その場合は、まずは膣マッサージに取り組み、まずは骨盤底筋をほぐしていきましょう。

〈参考〉 膣マッサージ

骨盤底筋トレーニングの実践②頻度・回数・タイミング

骨盤底筋が動かせるようになったら、その動きが骨盤底筋トレーニングの動きです。トレーニングの際は、呼吸は自然にしながら、骨盤底筋にグッ⤴と力を入れます。

力は2~3秒間入れ続け、その後4~6秒間リラックスします。この動きを10回で1セットとして、まずは1日3セット行いましょう。慣れてきたらセット数を増やしたり(最大10セット)、収縮時間を長く(最大10秒間)していきましょう。漫然とやらずに、しっかり骨盤底筋を意識しながら実施すると効果的です。

骨盤底筋 トレーニング ケーゲル体操 女性 尿漏れ
コツを掴めて来ると、仰向けだけでなく、座位や立位でも骨盤底筋の収縮ができるようになります。また、骨盤底筋トレーニングはどんなタイミングで実施してもOKです。
ぜひ日々の中に取り入れて、習慣化していきましょう。

骨盤底筋 トレーニング ケーゲル体操 女性 尿漏れ

骨盤底筋トレーニングの実践③継続する

骨盤底筋トレーニングの最後の重要ポイントは、このトレーニングを継続することです。
ここまで説明した通り、骨盤底筋トレーニングは非常に手軽で、いつでもどこでも、短時間で、道具も無しで実施できます。しかし、継続実施のハードルは意外に高く、「尿失禁の改善効果が表れる3ヵ月間の継続には、患者のやる気と定期的なトレーニング指導が必要だ」とする研究報告もあります[3]。

骨盤底筋トレーニングの継続を難しくしている要因の1つに、骨盤底筋が体内の筋肉であることが挙げられます。目に見えない位置にあるため、正しく動かせているかが分かりづらく、またトレーニング成果(筋力の向上)の評価や実感が難しい、ということです。

これをダイエットに置き換えると、正しく実施できているか分からない上に、体重の変化も分からない(体重計が無い)という状態です。

骨盤底筋の正しい動かし方は今回紹介できたので、あとは骨盤底筋の筋力を測定する方法があれば、トレーニングはグッと継続しやすくなるでしょう。

骨盤底筋の筋力測定には、専用ツールの活用がオススメです。各メーカーから幾つかの発売があるので、自分に合ったアイテムを選び、定期的な測定で変化を確認しながら、トレーニングを継続しましょう。

骨盤底筋 トレーニング ケーゲル体操 女性 尿漏れ

骨盤底筋の筋力計測に役立つツールとしてケーゲルチェッカーがあります。

下記の動画では、ケーゲルチェッカーを使用して骨盤底筋の筋力、柔軟性/動かす上手さをどのように計測するかをわかりやすく解説しているので、まずはぜひ動画をご覧ください。

 

注意:妊娠中の骨盤底筋トレーニング

妊娠中の骨盤底筋トレーニングには注意が必要です。産後の尿失禁予防のために、妊娠中も骨盤底筋トレーニングは実施可能ですが、お腹が張ってきたら止めるようにしましょう。特に28週目頃以降は、トレーニングの刺激がお産を招く恐れがあるため、基本的に控えましょう。

妊娠中の骨盤底筋トレーニングは、かかりつけ医と相談のうえ、実施してください。

まとめ:骨盤底筋トレーニングで健やかな生活を

骨盤底筋トレーニングについて紹介しました。骨盤底筋トレーニングは正しく継続できれば、少ない手間で大きなメリットが得られます。

イマイチ上手くいかない場合は、女性泌尿器科やレディースクリニックへの相談も有効です。ぜひ骨盤底筋トレーニングを習慣化し、健やかな骨盤底筋を手に入れましょう。

 

【参考文献】
[1]日本排尿機能学会/日本泌尿器学会, 女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版], 2019
[2]Goode, Patricia S., et al. "Effect of behavioral training with or without pelvic floor electrical stimulation on stress incontinence in women: a randomized controlled trial." Jama 290.3 (2003): 345-352.
[3]Rovner, Eric S., and Alan J. Wein. "Treatment options for stress urinary incontinence." Reviews in urology 6.Suppl 3 (2004): S29.


<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!

関連する商品はこちら

【体験談】早漏と相性抜群のグッズ!SVRでセックスの体験UP
細菌性膣症とは?その症状や原因を解説 
旧Twitter Instagram Facebook