月経(生理)期間中のムレ ナプキン内の湿度はどれくらい?
月経(生理)期間中の悩みの一つに、「性器周辺のムレ」があります。経血量などによって、ムレの具合には個人差があると思いますが、実際どの程度のムレが生じているのでしょうか?
今回は、月経期間中のナプキン内の湿度を測定した研究を紹介したいと思います。
目次
月経(生理)期間中のムレを測定
月経(生理)のムレの対策方法
まとめ:月経(生理)中のムレ、対策して少しでも快適に
月経(生理)期間中のムレを測定
今回紹介する研究は、2006年に文化女子大学と花王㈱の研究チームから発表されたものです[1]。
この研究では、「月経期間中は生理用ナプキンのみを使用する」と回答した、15人の女性(平均20.9歳)を対象に、月経期と非月経期それぞれで、ショーツおよびナプキン内の温度と湿度が測定されました。
経血量の影響を比較するため、月経期は「多い日(月経開始1~3日目)」と「少ない日(4日目以降)」の2つに分けられ、各被験者でそれぞれ1回ずつ測定されました。これに加え、月経でないタイミング(非月経期)でも1回測定するため、1人の被験者で3回の測定が行われました。
温湿度センサ挿入部位([1]より引用)
温度と湿度を測定するセンサは、月経期には「ナプキン内」と「ショーツとナプキンの間」の2カ所に、非月経期は「ショーツ内」の1カ所に挿入され、恥骨上部に来るように設置されました。
測定タイミング([1]より引用)
測定は120分間行われ、椅子で安静にしている「安静期」、3分間の歩行運動を行った後の「運動期」、試験終了直前の「終了期」の各20分の平均値が比較されました。
測定結果を以下に示します。
*p < 0.05, **p < 0.001([1]より引用)
ナプキン内とショーツ内の温度は、月経期(多い日/少ない日)と非月経期で大差はありませんでした。
一方、湿度は月経期(特に多い日)では非月経期よりも顕著に高くなることが分かりました。
月経期の湿度は、案性期、運動器、終了器で殆ど差が無く、常に高値であることが分かります。
ナプキン内外の温度と湿度の120分間の平均値([1]より引用)
こちらは各条件での、120分間の温度と湿度の平均値を示しており、月経期の相対湿度は90% RH近くになっています。これは、熱帯雨林の相対湿度(約80% RH)以上の値で、月経期のナプキン内がいかにムレてるかが分かります。
ちなみにこの測定は、26℃(6~7月と同等)の環境で行われました。真夏のナプキン内は、さらに高い温度・湿度になることが予想されます。
衣服内気候と快適域([2]を改変、及び[1]の測定結果をプロット)
衣服内の快適性は、衣服内の温度や湿度に影響を受けます。こちらは、衣服内気候と快適性の関係図に、この研究で測定された各条件の温度・湿度をプロットした図です。
非月経期(緑×)でもショーツ内環境は「不快」もしくは「全く不快」になりますが、月経期のナプキン内環境(赤×橙×)は「全く不快」、さらに発汗を伴う「発汗領域」にも該当し、極めて不快な環境であることが分かります。
月経(生理)のムレの対策方法
月経中のムレを放置すると単に不快なだけでなく、かゆみやかぶれ、臭い、さらには菌の繁殖による感染症のリスクも増加します。
月経中のムレ対策には、以下のような方法が挙げられます。
- 綿など、通気性の良い素材のショーツを使用する
- タイツなど、タイトな服装は避ける
- ナプキンはこまめに取りかえる
- アンダーヘアのケアをする
さらに、ナプキン以外の生理用品を使用することで、ムレの対策に繋がる可能性があります。
具体的には、タンポン、月経カップ、吸水ショーツなどが挙げられます。
月経カップと吸水ショーツは、「初めて聞いた」という方もいるかもしれませんが、興味があればこれを機に試してみても良いでしょう。
また、低用量ピルは子宮内膜の増殖を抑制し、経血量を減少させる働きがあります[3]。子宮内に留置し、黄体ホルモンを継続的に放出する子宮内避妊具(代表商品『ミレーナ』)にも同様の効果があると言われています。経血量の減少すれば、ムレの軽減も期待できるでしょう。
まとめ:月経(生理)中のムレ、対策して少しでも快適に
今回は、月経中のムレについて定量的に見てみました。「ナプキン内の湿度は熱帯雨林以上」ということで、男性も含め、月経期間中のムレに対する共通理解になればと思います。
近年は、ナプキンやタンポン以外にも、さまざまな生理用品が登場しています。「生理中のムレは仕方がないもの」と考えている方がいましたら、ぜひ一度、先に挙げた月経カップや吸水ショーツ、低用量ピルなどを試してみてください。それによって、生理中の不快感が少しでも軽減することを願います。
【参考/出典元】
[1]佐藤真理子, et al. "月経期における生理用ナプキン内微気候と快適性." 日本家政学会誌 57.7 (2006): 477-485.
[2]東洋紡株式会社, 衣服内気候と快適域の関連
[3]日本産婦人科学会, OC・LEPガイドライン 2015年度版
<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
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