2021.07.31

月経困難症、PMSとは? 数字で分かる生理痛の実態

女性が思春期(初経)を迎えると、1ヵ月前後の周期で「月経」が来るようになります。月経は「月経痛」などの不快症状を伴いますが、症状の程度には個人差があり、自分以外の女性がどの程度の不快を感じているか、知らないという方は多いのではないでしょうか?

今回は、TENGAヘルスケアが2018年に実施した「月経痛実態把握調査」の結果をもとに、月経の症状について解説していきます。女性だけでなく、月経について理解を深めたい男性もぜひ読んでください。

目次

月経関連の言葉の定義
 生理痛、月経痛とは
 月経困難症とは
 月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)とは
 月経随伴症状とは
月経痛(生理痛)の痛みはどの程度?
月経痛(生理痛)の痛みを点数で表すと?
月経痛(生理通)やPMSでのパフォーマンス低下はどれくらい?
月経痛(生理痛)やPMSへの対処法は?
月経痛(生理痛)やPMSの治療費はどれくらい?
器質性疾患の経験率
まとめ:月経痛(生理痛)やPMSは社会全体の課題

月経関連の言葉の定義

日本産科婦人科学会によると、月経とは「1ヵ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期性出血」と定義されています[1]。

「生理」と呼ばれることもありますが、医学的に正式な呼び方は「月経」です。

本題の前に、まずは月経関連の言葉の定義を確認しましょう。

生理痛、月経痛とは

月経に伴って生じる不快症状の一つで、日本女性心身医学会によると「生理の直前から生理中にかけて子宮が収縮するために起きる、下腹部や腰の痛み」と定義されています[2]。

正式な名称は「月経痛」ですが、一般的に「生理痛」とも呼ばれます。

月経期間中は、プロスタグランジンと呼ばれる物質の作用によって、子宮の筋肉が収縮し、経血の排出が促されます。このプロスタグランジンの分泌量が多かったり、プロスタグランジンへの感受性が高かったり、子宮の入口が狭くて経血が出にくかったりすると、子宮が過剰に収縮し、これが月経痛の主な原因だと考えられています。

月経困難症とは

月経期間中には、月経痛以外にも、腹部膨満感、吐き気、頭痛、疲労/脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、憂うつ、といった不快症状が生じます。これらの病的症状は総称して「月経困難症」と呼ばれます[3]。

月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫などの器質性疾患が原因となっている「器質性月経困難症」と、疾患を伴わない「機能性月経困難症」の二つに分類されます。

「単なる月経痛だと思っていたら、子宮内膜症だった」という場合もあるため、月経痛がひどい方は、産婦人科での診察が推奨されます。

月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)とは

月経の期間ではなく、月経前の3~10日間で生じる精神的・身体的な症状を「月経前症候群(PMS: Premenstrual Syndrome)」と呼びます。

症状には、イライラや不安感、無気力、怒りっぽくなるといった精神症状、乳房や下腹部の張り、頭痛、腰痛、むくみといった身体症状がありますが、これ以外にも多様な症状が生じます。

PMSの中でも精神症状が強いものは「月経前不快気分障害(PMDD: Premenstrual Dysphoric Disorder)」と呼ばれます。

何らかのPMS症状を抱えている割合は、日本の生殖年齢の女性の70~80%程度だと言われています。また、社会生活に支障をきたす程のPMS、PMDDを抱えている割合は、それぞれ5.4%、1.2%だと言われています[4]。

月経随伴症状とは

月経困難症やPMS/PMDDなど、月経に伴う不快症状を全て合わせて「月経随伴症状」と呼びます。

2013年に行われた調査では、月経随伴症状に伴う社会損失は、通院費用930億円、医薬品費用987億円、労働損失4,911億円(合計6,828億円)と推定されました[5]。

月経に伴う負担や不快症状は、女性本人だけでなく、男性も含め社会全体で対処するべき問題だと言えます。

月経痛(生理痛)の痛みはどの程度?

ではここから、調査結果をもとに、月経痛/月経随伴症状の実態について解説をしていきます。

この調査は、20~40代の女性10,000人(5歳刻みで各1,643~1,674人)に対するアンケート調査です。

月経痛 生理痛 程度の割合

まずは月経痛の痛みの程度です。

「我慢できる」も含めて、8割以上の女性が「月経痛」を感じていることが分かりました。

また、「ひどい」「かなりひどい」と回答した割合は約4割で、6.3%(約15人に1人)は「かなりひどい」(対策しても社会活動に支障が生じる)という結果でした。

月経痛 生理痛 痛みの程度 年代別

5歳刻みで見ると、年代が上がるにつれて月経痛の程度が弱くなっていることが分かります。

「ひどい」「かなりひどい」と回答した割合は、20代で約5割、40代では約3割に下がってはいましたが、依然として高い割合だと言えます。

年代に関係なく、多くの女性が月経痛に悩まされていることが伺えます。

月経痛 生理痛 痛みの程度 器質性疾患 経験なし 経験あり

さらに、何かしらの器質性疾患(子宮内膜症や子宮筋腫など)を経験した人では、経験なしの人よりも、「かなりひどい」と回答する割合が約2倍でした。

子宮筋腫や子宮内膜症などが、強い月経痛の原因となっている場合があります。月経痛が強い人は産婦人科を受診し、これらの病気が隠れていないか、一度検査したほうがよいと考えられます。

月経痛(生理痛)の痛みを点数で表すと?

月経で生じる痛みの程度を100点満点で自己評価してもらったところ、以下の結果が得られました。

0点は「痛み無し」、100点は「これ以上の痛みは考えられない」です。

月経痛 生理痛 痛みの程度 点数

月経痛が「かなりひどい」人が感じる痛みは、想像しうる最大の痛みの約8割、「我慢できる」人でも約4割の痛みが生じていることが分かりました。

月経痛 生理痛 痛みの程度 点数 分布

ただし、点数のバラツキは大きく、0~100点までまんべんなく分布しています。

月経痛の程度の個人差は大きいが、非常に強い痛みを伴っている人も多いことが分かります。

月経痛(生理通)やPMSでのパフォーマンス低下はどれくらい?

月経随伴症状(月経痛やPMS)が、仕事や家事といった活動を妨げる場合があります。

以下は、月経の影響が全く無い、健康時の自身の活動のパフォーマンスを100点として、月経随伴症状がある時は、それによって何点妨げられているかを自己評価した結果になります。

月経随伴症状 月経痛 PMS パフォーマンスの低下

丁度半分(5割)の人が、月経随伴症状によってパフォーマンスが半分以下になる(50点以上減少する)と回答しました。

月経随伴症状 月経痛 PMS パフォーマンスの低下 平均

また、パフォーマンス低下の平均点は41.8点で、月経痛が強い人ほど、パフォーマンスの低下が大きいことが分かります。

もちろん個人差はありますが、月経随伴症状によるパフォーマンスの低下、それによる社会的損失は非常に大きいと言えるでしょう。

月経痛(生理痛)やPMSへの対処法は?

月経痛やPMSに対してよく行う対処法は、以下の通りでした。

月経痛 生理痛 PMS 対処法

「特に何もしない」が全体で4割を超えています。

最も実施される対処法は「市販薬の服用」ですが、逆に「産婦人科の受診」は低く、「かなりひどい」でも受診する割合は25%、「ひどい」「我慢できる」では受診割合は1割に届きませんでした。

月経痛(生理痛)やPMSの治療費はどれくらい?

月経痛やPMSの1ヵ月にかかる治療費(診察費や医薬品の費用)は、以下の通りでした。

月経痛 生理痛 PMS 治療費

全体では月の平均治療費は¥648で、月経痛が強い人程治療費が高くなる傾向でした。

月経痛 生理痛 PMS 治療費 分布

ただし、治療費も個人差は大きく、¥0と回答する人もいれば、最高値は¥10,000でした。

治療費が¥0の人を除いた場合、1ヵ月の平均治療費は¥1,060でした。

器質性疾患の経験率

最後に、今回の調査で得られた、器質性疾患の経験率を紹介します。(調査の都合上「子宮内避妊具(ICU)やペッサリーの挿入」が含まれています)

子宮筋腫 子宮内膜症 クラミジア 子宮ポリープ PCOS 子宮頸がん 子宮腺筋症 経験率

最多は「子宮筋腫」の8.4%、次いで「子宮内膜症」の6.2%となりました。

これらの器質性疾患の「どれも経験したことがない」という回答は78.3%でした。

子宮筋腫 子宮内膜症 クラミジア 子宮ポリープ PCOS 子宮頸がん 子宮腺筋症 経験率 年代別

年齢別で見た場合、年齢が上がるにつれて、特に「子宮筋腫」の経験率が増えていることが分かります。

「どれも経験したことがない」は20代前半で89.8%, 40代後半で72.2%でした。

女性にとってこれらの器質性疾患が、決して珍しいものではないことが分かります。

月経痛の裏には、器質性疾患が潜んでいる場合があります。月経痛に悩まれている方は、ぜひ定期的な検診を心がけてください。

ちなみに、日本産婦人科医会によると、「子宮筋腫」の有病率は40代で約25%[6]、「子宮内膜症」の有病率は生殖年齢の女性の約10%です[7]。

今回の調査結果は、医療機関での検査を伴わない値なので、医会が発表している有病率と大きな乖離はないと思われます。

まとめ:月経痛(生理痛)やPMSは社会全体の問題

月経痛やPMSによって、多くの女性が不調、パフォーマンスの低下を感じていることが分かりました。月経に関連した悩みは、当事者の女性だけでなく、社会全体の損失です。男女関係なく、月経に伴う負担やリスク、そしてその個人差を適切に理解し、社会全体で対応することが求められます。

 

【参考/出典元】
[1]日本産科婦人科学会, 産科婦人科用語集・用語解説集改訂新版, 金原出版, 2003
[2]日本女性心身医学会, 女性の病気について
[3]日本産科婦人科学会, 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版, 2018
[4]日本産婦人科学会, 産婦人科診療ガイドラインー婦人科外来編2014
[5]Tanaka, Erika, et al. "Burden of menstrual symptoms in Japanese women: results from a survey-based study." Journal of medical economics 16.11 (2013): 1255-1266.
[6]日本産婦人科医会, (1)子宮内膜症の発生
[7]日本産婦人科医会, 女性の健康Q&A, 子宮筋腫について教えてください。

 

監修医 柴田綾子

<この記事の監修>
淀川キリスト教病院 産婦人科
柴田 綾子(医師)
■産婦人科専門医 ■周産期専門医(母体・胎児)
淀川キリスト教病院

<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
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