2021.05.30

妊活でまず「できること」 自宅から医療機関まで、妊活の流れを紹介

注)「ちつ」の解剖学的に正しい表記は「腟」ですが、この記事では一般的な表記である「膣」を使用します。
「子どもが欲しい」と思い、いざ妊活を始めるとしても、何から始めたらよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、最近妊活を始めた、もしくはこれから妊活を始めるという方のために、妊活の全体的な流れと、すぐにできること・やっておきたいことを紹介します。

目次

まずは自宅ですぐにできるチェックから
 《女性》基礎体温を記録しよう
 《男性》セックス中の状態をチェックしよう
 《夫婦》生活習慣をチェックしよう
 《男性》精子の状態をセルフチェック?
 チェックで問題がなければタイミング法から
医療機関ではまず何をする?
 検査で体の状態を知る
 検査結果を基に妊活の方法を検討する
 簡単な方法からより高度な治療へステップアップ
妊活(不妊治療)のステップアップですることは?
 タイミング法
 人工授精
 体外受精
妊活前からできること/やっておくべきこと
まとめ:できることを把握して計画的な妊活を

まずは自宅ですぐにできるチェックから

妊活 できること

妊活で最初に行うことは、男女共に自分達の体の状態を知ることです。

妊活開始時点で女性の年齢が30歳を超えている場合は、迷わず医療機関(産婦人科、不妊クリニックなど)を受診し、検査から始めることをオススメします。男女共にまだ若い場合でも、時間に余裕があれば、医療機関の検査から始められるとベストです。

ただ「なかなか時間もないし、まずは自分達でできることから始めたい」という場合は、自宅で可能なチェックから始めてみましょう。

《女性》基礎体温を記録しよう

女性の妊活のはじめの一歩は、基礎体温の測定です。「基礎体温」は、基礎体温計と呼ばれる目盛りの細かい体温計で、毎朝起床してすぐに布団の中で測定します。この基礎体温を毎日グラフに記録すると、基礎体温のグラフから、排卵日やホルモンの状態など、女性の体の重要な情報を知る手掛かりが得られます。

正常な場合、基礎体温は約2週間周期で、高温期と低温期の二層に分かれます。基礎体温が二層に分かれていれば、排卵が行われ、妊娠に必要なホルモンが分泌されていることが伺えます。反対に、基礎体温が二層に分かれないなどの場合は、排卵が行われていなかったり、黄体ホルモン不全などの可能性があります。

基礎体温の記録には専用のアプリもあるので、活用してみると良いでしょう。もしグラフの形が正常でないなと感じたら、医療機関へ相談しましょう。

《男性》セックス中の状態をチェックしよう

当然ですが、自然な妊娠のためには、男性がセックス中に女性の膣内で射精する必要があります。挿入するために十分な勃起ができているか、膣内で射精できているか確認してみましょう。

また、男性の性機能障害のひとつに、精液が陰茎ではなく膀胱に流れてしまう「逆行性射精」があります。オーガズム(射精する感覚)があっても、精液が出てこない現象です。「膣内で射精できたな」と思っても、ちゃんと陰茎から精液が出ているか、一度確認してみましょう。

《夫婦》生活習慣をチェックしよう

男女共に、ストレス過多や、睡眠不足、暴飲暴食、喫煙、過度な飲酒、などの乱れた生活習慣は、精子や卵子、子宮に悪影響を及ぼします。逆に、健康な生活習慣は妊娠力を高めます。生活習慣が乱れている自覚があれば、なるべく正すようにしましょう。

《男性》精子の状態をセルフチェック?

WHOによると、不妊のカップルでは、48%の割合で男性にも原因があり、その原因の殆どが「精子の質が低いこと(造精機能障害)」であると言われています。「射精はあるけれど精子は正常なのか?」と不安になる方もいるでしょう。

「精子の状態は知りたいが、病院へ行くのはまだ気が引ける」という場合は、自宅で精子のセルフチェックができる商品があります。『TENGA MEN’S LOUPE(メンズルーペ)』は、拡大レンズとスマホのカメラを利用して、自分で精子の観察ができる商品です。

もちろん医療機関での検査がオススメですが、「まずは試しに」という感覚で、一度見てみても良いかもしれません。

<参考>
妊活・不妊に悩む前に、自分の体を知る一歩として スマホ用精子観察キット「TENGA MEN’S LOUPE」

メンズルーペ 精液検査 精子 観察

チェックで問題がなければタイミング法から

以上のチェックを行い、男女共に体に問題がなさそうであれば、まずは「タイミング法」から始めてみるのが良いでしょう。先述の基礎体温グラフや、月経周期、排卵検査薬などで排卵日を予想し、その周辺でセックス(膣内射精)します。

またタイミング法では、排卵予定日の前5日と後1日(合計7日間)の期間内になるべく多くセックスすることがオススメです。ただ「毎日セックスするのは大変」という方も多いはず。その場合は「シリンジ法」がオススメです。

男女共に若い場合は、タイミング法を6ヵ月程度実施し、それで妊娠に至らない場合は医療機関を受診しましょう。

タイミング法やシリンジ法の詳しい解説は、以下のページを確認してみましょう。

<参考>
・妊活の基本、タイミング法!妊娠しやすい日に適切な妊活を
・シリンジ法を知れば、妊活はもっと自由になる 「Seed in」でセルフ妊活の選択肢を

Seed in シリンジ

医療機関ではまず何をする?

妊活 できること

次に、医療機関で行うことを紹介します。医療機関は、不妊治療の専門医のいる産婦人科、泌尿器科、不妊クリニックなどを受診しましょう。

検査で体の状態を知る

医療機関では、男女共にまず検査を行い、二人の体の状態をチェックします。

女性では主に排卵状況やホルモン、子宮の状態などを検査します。この際、前述の「基礎体温のグラフ」があると、検査の参考になるかもしれません。

男性は、精液検査によって精子の数や運動性をチェックします。

また男女共に、性感染症の検査や、セックスでの状況を問診する場合もあります。

重要なことですが、男性と女性、どちらかに異常があれば妊娠率は低下します。男性の状態も、妊活や不妊治療の成否に影響するので、医療機関での検査は、必ず男女共に受けましょう。

検査結果を基に妊活の方法を検討する

検査や問診を通じて自分達の体の状態が分かったら、それに合わせて、適切な治療や方法が提案されます。

例えば、女性が排卵しにくい状態の場合は、排卵誘発剤などによって排卵を促します。一方、男性の精子の状態があまり良くないときは、生活習慣の指導やサプリメントの服用などを行い、改善を目指します。

また男女共に、器質性の異常(精巣静脈瘤や子宮筋腫など)が発見され、手術が必要になる場合もあります。

簡単な方法からより高度な治療へステップアップ

医療機関の治療(不妊治療)では、器質性の異常が無い場合、投薬や生活習慣の指導など、簡単なことから始まり、その後段々と、人工授精や体外受精、顕微授精といった高度な治療へ進んでいきます。このように治療のレベルを上げていくことを「不妊治療のステップアップ」と呼びます。

妊活(不妊治療)のステップアップですることは?

妊活 できること

「不妊治療のステップアップ」では、二人の状態や状況に合わせて、主に以下の方法が段階的に実施されます。

  1. 排卵予定日に合わせてセックスを行うタイミング法
  2. 子宮内へ人工的に精子を注入する人工授精
  3. 卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮へ戻す体外受精

以下、それぞれの方法について解説していきます。

タイミング法

先程は自宅で行うタイミング法を紹介しましたが、医療機関で行うタイミング法では、超音波検査で排卵日をより正確に予想したり、排卵を誘発させる薬を用いたりします。それ以外は自宅だけで行うタイミング法と大差はありませんが、排卵日がより正確に予想できるため、より妊娠が期待できます。

<参考>
妊活の基本、タイミング法!妊娠しやすい日に適切な妊活を

人工授精

人工的に子宮内に精子を注入する方法を「人工授精」と呼びます。人工授精は、軽度の男性不妊(精子の状態が少し悪い)や、女性の頸管粘液の量が少ないなどの場合で適用されます。

人工授精の流れは、まず男性が自宅もしくは医療機関で精液を採取し、それを医療機関に提出します。提出された精液は、検査の上、洗浄、濃縮され、専用のカテーテルで子宮に注入されます。

タイミング法と同様に排卵日を特定するか、排卵を誘発させたタイミングで行われます。

費用は、厚生労働省の調査によると、1回約1~3万円と言われています[1]。(これまでは自費診療での実施でしたが、2022年4月より保険診療でできるようになりました)

また、人工授精での妊娠率は、6回程度で上限に達するため、そこまでに妊娠できなければ次のステップに進むことが一般的です。

体外受精

タイミング法や人工授精で結果が出なかったり、卵管に障害がある、精子の質が低いなどの場合は、「体外受精」が行われます。体外受精は、卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮内に戻す方法です。

体外受精では、卵子を採取する必要がありますが、ホルモン剤を使い卵子を多く育てて複数の卵子を採取する方法や、薬を使用せず自然に成長した卵子を1つだけ採取する方法、また麻酔の有無など実施方法には複数の選択肢があります。どの方法でも、卵子は経膣的に卵巣に針(採卵針)を刺して採取されます。

また、受精卵を子宮に戻す胚移植にも様々な方法があります。受精卵(胚)の状態によって、受精卵(胚)を数日間育ててからそのまま子宮内に戻す「新鮮胚移植」と、受精卵(胚)を一旦凍結し、後日解凍して子宮に戻す「凍結胚移植」があります。また、移植するタイミングによって、月経周期の排卵のタイミングに合わせて移植する「自然周期胚移植」と、ホルモン剤を使って移植する時期を調整する「ホルモン補充周期胚移植」があります。

また、複数の卵子を採卵し複数の受精卵(胚)ができた場合は、それらを一旦凍結し、後日解凍して子宮に戻す「凍結胚移植」が行われる場合もあります。

厚生労働省の調査によると、これら体外受精の1回の費用は20~70万円と言われています[1]。高額ですが、体外受精には国や住民票のある自治体からの補助が出る場合もあるため、実施の際は活用していきましょう。また、2022年4月からは体外受精も保険適応となりました。ただし、保険適応となる治療には一定の条件があります。医療機関によって対応が異なりますので、治療を受ける医療機関でよく相談してください。

<参考>
不妊治療や精液検査のサポートに 精子を適切な温度で守る保温器「SEED POD」

妊活前からできること/やっておくべきこと

妊活 できること

妊活を始める際の自宅でのチェックと、医療機関での治療の流れを説明してきました。ただ妊活を始めたからといって、男女共にいきなり妊娠に適した体になるわけではありません。本格的な妊活開始の前に、生活習慣の改善や、二人の「家族像」の共有などの準備ができると良いでしょう。

<参考>
・妊活中の食事は抗酸化が大切?男女共に心がけたい、抗酸化を意識した食活習
・精子の質を維持・改善させよう ~精子を守るための7ヵ条~
妊活ではパートナーと意識を揃える 「家族像」を共有する

まとめ:できることを把握して計画的な妊活を

妊活の基本的な流れや、すぐにできることを紹介しました。妊活は二人の年齢や状況、希望などによって、進め方が大きく変わります。ただ何にせよ、自分達の体の状態を確認し、それに合わせた適切な方法を選択することが大切です。できること・やるべきことを把握し、計画的に妊活を進めていきましょう。

 

【参考/出典元】
[1]厚生労働省「不妊専門相談センター」の相談対応を中心とした取組に関する調査

 

聖隷浜松病院リプロダクションセンター センター長
今井 伸(医師)
■泌尿器科医 ■性機能専門医 ■生殖医学会生殖医療専門医 ■性科学会認定セックス・セラピスト専門医
聖隷浜松病院リプロダクションセンター

<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!

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