女性のオーガズムの意味 オキシトシンに注目して
男性がオーガズムに達すると射精が生じます。射精が無ければ子孫は残せないので、男性のオーガズムは人類にとって不可欠の機能だと言えます。
一方、女性のオーガズムに役割はあるのでしょうか。
今回は、女性のオーガズムのメリットの一つとして、オキシトシンに注目して解説していきます。
目次
オキシトシンとは
オキシトシンとは、脳の下垂体という部位で生成されるホルモンの一種で、「愛情ホルモン」や「幸せホルモン」などと呼ばれることもあります。
オキシトシンには不安とストレスを軽減させる作用があり、オキシトシンの鼻スプレーによって、対人恐怖症患者の症状が軽減されることが報告されています[1]。またオキシトシンが高い状態だと、相手への信頼感が高まったり[2]、相手の表情からその相手の感情を正しく推測する能力が上がる、といった報告がされています[3]。
このようにオキシトシンは、社会活動や対人関係の構築において、重要な役割を担っています。
またオキシトシンは、授乳の際に母親の脳内で放出され母乳の分泌を促しますが、それだけでなく、母子の絆の形成にも関与していると考えられています。
女性のオーガズムでオキシトシンが放出される
ではオキシトシンは、どのようなタイミングで放出されるのでしょうか。
オキシトシンは、以下のようなタイミングで放出されると言われています。
- 他者とのふれあい、スキンシップ、セックス
- 家族、友人との団らん
- ペットとのふれあい
特にセックスでのオキシトシンの分泌は、セックス後の多幸感や余韻を生んでいると考えられています。
実際、オキシトシンの放出や受容体の活動を阻害すると、セックス後の多幸感が低下することが報告されています[4]。
もう一つ、オキシトシンを増やす手頃な方法があります。
それが「オーガズム」です。
([5]を参考に作図)
こちらは、マスターベーション中の、血中オキシトシン濃度をリアルタイムで測定した実験結果です。
女性において、マスターベーションの開始からオキシトシン濃度が徐々に増加し、オーガズムのタイミングで最大になることが分かります。
身近に恋人や家族がいなくても、マスターベーションでオーガズムに至ることができれば、オキシトシンは増やせるのです。
女性のオーガズムでのオキシトシンの放出理由
なぜ、女性はオーガズムでオキシトシンが増えるのでしょうか。
その答えは、脳の活動にあります。
([6]より改変)
こちらは男女各11人の、性的刺激を受けている際の脳活動の様子です。各状態で、安静時よりも活動が増加している部分が、明るく示されています。
こちらを見ると、オキシトシンの放出に関係する「下垂体」(白い矢印の部分)が、女性のオーガズム中に活性化していることが分かります。一方男性の射精時には、下垂体は活性化していません。
また女性でも、クリトリス刺激(オーガズム無し)、オーガズムの前、疑似オーガズムでは下垂体は活性化しませんでした。
これが、女性のオーガズムでオキシトシンが放出されるメカニズムだと考えられます。
まとめ:オーガズムでオキシトシンを増やそう
女性のオーガズムの利点の一つに、オキシトシンの放出があることが分かりました。
セックスだけでなく、マスターベーションでのオーガズムでもオキシトシンは放出されます。
ストレスや悩みが多いなと感じている女性は特に、マスターベーションの回数を増やしてみると良いかもしれません。
【参考/出典元】
[1]Heinrichs, Markus, Bernadette von Dawans, and Gregor Domes. "Oxytocin, vasopressin, and human social behavior." Frontiers in neuroendocrinology 30.4 (2009): 548-557.
[2]Baumgartner, Thomas, et al. "Oxytocin shapes the neural circuitry of trust and trust adaptation in humans." Neuron 58.4 (2008): 639-650.
[3]Domes, Gregor, et al. "Oxytocin improves “mind-reading” in humans." Biological psychiatry 61.6 (2007): 731-733.
[4]デイヴィッド・J・リンデン, 快感回路, 河出書房新社, 2014
[5]Carmichael, Marie S., et al. "Plasma oxytocin increases in the human sexual response." The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 64.1 (1987): 27-31.
[6]Huynh, Hieu Kim, Antoon TM Willemsen, and Gert Holstege. "Female orgasm but not male ejaculation activates the pituitary. A PET-neuro-imaging study." Neuroimage 76 (2013): 178-182.
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<この記事の監修>
福元メンズヘルスクリニック 院長
福元 和彦(医師)
■泌尿器科医 ■性機能学会専門医 ■抗加齢医学会専門医 ■排尿機能学会認定医
福元メンズヘルスクリニック
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<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任 牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!
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