早漏対策にED治療薬!?勃起薬の意外な効果を解説
EDと早漏は、どちらも一般的な性機能障害で、多くの男性が抱える悩みです。EDの治療には、バイアグラなどの勃起薬が有効ですが、この勃起薬が早漏も改善させる可能性があることをご存じでしたか?
今回は勃起薬(ED治療薬)と早漏の関係について、臨床研究の報告を交えながら解説していきます。
目次
早漏の治療薬
EDの治療薬
早漏対策に勃起薬(EDの治療薬)
【研究紹介】勃起薬の早漏改善効果について
勃起薬で挿入時間UP
勃起薬の服用を止めても、早漏改善効果は維持される
服用回数が多いほど効果UP
実験結果まとめ
EDの治療薬で早漏が改善する理由は不明
早漏対策はトレーニングでも
まとめ:自分にあった方法で早漏対策を
早漏の治療薬
早漏の治療薬は、『プリリジー』という経口薬が有名で、世界50カ国以上で認可されています。しかし日本では未認可で、1錠1,500~5,000円程度と高額、また扱っている医療機関も少ないため、あまり普及はしていません。
<早漏の定義など、詳しくは以下参照>
早漏とは?薬やトレーニングによる改善方法も紹介
EDの治療薬
一方EDの治療薬には、『バイアグラ』『レビトラ』『シアリス』、またこれらのジェネリックが存在し、国内でも多数の医療機関が取り扱っています。これらのED治療薬がEDだけでなく、早漏を改善させる可能性があるということが今回の主題です。
早漏対策に勃起薬(EDの治療薬)?
EDの治療薬、いわゆる勃起薬というと「早漏には逆効果なのでは?」と考える人もいるのではないでしょうか。確かに、「すぐに射精してしまう」状態に、さらに「勃起を補助する」薬は、火に油を注いでいるイメージがあるかもしれません。本当に勃起薬に早漏改善効果があるのか、実際の研究報告を見ていきましょう。
【研究紹介】勃起薬の早漏改善効果について
勃起薬と早漏の関係性については多数の研究報告がありますが、今回紹介するのは「バルデナフィル」(代表製品『レビトラ』)に関する報告です[1]。
この研究では、男性が早漏のカップル40組を、勃起薬(バルデナフィル10 mg)服用群(VAR群)30組と偽薬(プラセボ:本物の薬と見分けがつかないが有効成分が入っていないもの)服用群10組に分け、毎回の性交渉でそれぞれを服用しました。服用期間は8週間で、8週間後に各カップルの膣内挿入時間(膣挿入から射精までの時間)を測定したところ、以下の結果が得られました。
勃起薬で挿入時間UP
[1]を基に作成
VAR群では服用開始前と比較して、8週間後の膣内挿入時間が有意に増加(0.6分→4.5分)していることが確認されました。比較として、早漏の治療薬『プリリジー』の成分であるダポキセチンの12週間服用による挿入時間の変化は、ダポキセチン30 mgで0.9分→2.8分、60 mgで0.9分→3.3分と報告されています[2]。
実験条件に差があるため一概に比較はできませんが、勃起薬(バルデナフィル)には早漏改善効果があることが示唆されます。
勃起薬の服用を止めても、早漏改善効果は維持される
またこの研究では、8週間の服用後、VAR群とプラセボ群で服用薬を入れ替えて、更に4週間実験が行われました。入れ替えてから4週間後に膣内挿入時間を再計測しました。
すると、プラセボ群(入れ替え後はバルデナフィル10 mg服用)でも、有意な時間延長(0.7分→2.0分)が確認されました。一方、VAR群(入れ替え後はプラセボ薬を服用)では、膣内挿入時間は8週間後の時点からは減少していましたが、服用前と比較すると、依然として有意に延長されていました。
[1]を基に作成
このことから、勃起薬(バルデナフィル)は服用後に挿入時間の延長効果が現れ、服用終了後一定期間が経過しても、効果が持続すると言えます。しかしながら、バルデナフィルの半減期(体内で効果が失われるまでの時間)は数時間と言われているため、一定期間経過後も効果が持続した要因は不明です。長い挿入時間を一度体験し、それに慣れたことが一因かもしれません。
服用回数が多いほど効果UP
[1]より改変
またこの研究では、試験期間中の性交回数(=服用回数)がカップル毎に異なっていましたが、VAR群では、服用回数と8週間時点での膣内挿入時間の間に、正の相関が確認されました。
実験結果まとめ
以上をまとめると、勃起薬(バルデナフィル)の服用で、早漏患者の挿入時間は有意に改善し、また服用頻度が高いほど改善効果も高かったということが報告されました。
EDの治療薬で早漏が改善する理由は不明
今回はバルデナフィル(レビトラ)で行われた研究を紹介しましたが、シルデナフィル(バイアグラ)やタダラフィル(シアリス)といった他のED治療薬でも、早漏改善効果は示唆されています[3,4]。
これらの勃起薬が何故早漏を改善させるかについては、勃起が持続するという心理的な安心感や、硬度増加によって陰茎内の神経に刺激が伝わりづらくなるから、等の理由が考えられますが、改善のメカニズムはまだ明らかになっていません。
勃起薬での早漏治療は、勃起薬の通常の使用方法ではないため、もしこの治療法に興味のある場合は、必ず専門医に相談してから実施するようにしましょう。
<参考>
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早漏対策はトレーニングでも
早漏は治療薬ではなく、トレーニングによって対策することも可能です。トレーニングでは専用アイテムでマスターベーションしながら、骨盤底筋の操作で射精をコントロールする方法を習得することができます。
服薬とは異なり時間と手間を要する一方、一度習得してその方法を忘れなければ、効果は半永久的に持続し、副作用もありません。
早漏トレーニングに興味のある方は、以下から詳しい方法を確認しましょう。
まとめ:自分にあった方法で早漏対策を
今回は勃起薬(ED治療薬)の早漏改善効果について解説しました。実際この方法を試す場合は、専門医に相談のうえ、勃起薬は必ず医療機関で処方されるものを使用しましょう。日本では早漏はあまり疾患として扱われないため、不正確な情報もあふれていますが、適切に実施すれば様々な方法で対処が可能です。ぜひ自分にあった対処方法を見つけて、より良い性生活を手に入れてください。
【参考/引用元】
[1]Aversa, Antonio, et al. "Effects of vardenafil administration on intravaginal ejaculatory latency time in men with lifelong premature ejaculation." International Journal of Impotence Research 21.4 (2009): 221-227.
[2]Pryor, Jon L., et al. "Efficacy and tolerability of dapoxetine in treatment of premature ejaculation: an integrated analysis of two double-blind, randomised controlled trials." The lancet 368.9539 (2006): 929-937.
[3]Sun, Yi, et al. "Efficacy of phosphodiesterase-5 inhibitor in men with premature ejaculation: a new systematic review and meta-analysis." Urology 86.5 (2015): 947-955.
[4]Qin, Zhiqiang, et al. "Safety and efficacy characteristics of oral drugs in patients with premature ejaculation: a Bayesian network meta-analysis of randomized controlled trials." International journal of impotence research 31.5 (2019): 356-368.
<この記事の監修>
福元メンズヘルスクリニック 院長
福元 和彦(医師)
■泌尿器科医 ■性機能学会専門医 ■抗加齢医学会専門医 ■排尿機能学会認定医
福元メンズヘルスクリニック
<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!