「男の潮吹き」の真実 ~被験者が語る潮吹きのやり方~
「男の潮吹き」といえば、ドライオーガズムと並ぶ全男子憧れの存在ですが、その正体はベールに包まれています。しかし2018年、一人の男性の「潮吹き現象」を観測した研究が発表され、この界隈は一つの盛り上がりを見せました。今回は、当時その研究で実際に潮を吹いた被験者の話を交えつつ、「男の潮吹き」について解説していきます。
目次
「男の潮吹き」研究とは
筆者の「潮吹き」体験
「潮吹き」研究のきっかけ
「潮吹き」研究の方法
「男の潮吹き」の正体
「男の潮吹き」のやり方
快感の強さが重要
骨盤底筋の強さが重要
尿を漏らす感覚が重要
まとめ:セクシャルサイエンスの発展のために
「男の潮吹き」研究とは
今回紹介する「男の潮吹き」研究は、2018年の日本性機能学会総会にて、川崎医科大学の泌尿器科チームより発表され、その後国際論文としても公開された研究です[1]。
この研究では、一人の男性(当時25歳)が潮を吹き、その最中の下腹部の臓器の動きや液体の流れが、超音波エコーによって観測されました。
これは2021年現在、筆者が知る限り世界で唯一、「男の潮吹き」という現象に対して科学的考察を行った研究です。
そして、この研究で「潮を吹いた男性」というのが筆者です。今回はそんな筆者の体験も交えながら、「男の潮吹き」を解説していきます。
筆者の「潮吹き」体験
そもそも「男の潮吹き」がどのような現象であるかについて、明確な定義はありません。
なのでここでは、「男性が射精した直後、陰茎を刺激され続けることによって、尿道から勢いよく、液体が繰り返し放出される現象」と定義したいと思います。
筆者が初めて潮を吹いたのは23歳のときでした。一般的に、男性が射精するとそこで性交は中断か終了します。しかしその日は、筆者が射精した後も陰茎を刺激され続け、その結果、全身が痙攣するような感覚と共に、潮を吹いたのでした。
「潮吹き」で放出される液体は精液とは違いサラサラで、射精と放尿を同時にしているような感覚です。しかし、「潮吹き」での液体の放出は1 m以上の高さにもなり、その勢いは明らかに射精や放尿とは異なるものでした。
当然、筆者はその快感に病みつきとなり、その後何度も経験を重ね、潮吹きのコツを習得していきます。そして、この「男の潮吹き」とは一体何なのか、という疑問を持つようになりました。
「潮吹き」研究のきっかけ
ある日筆者は、川崎医科大の泌尿器科チームによる、「射精中の男性の骨盤内の様子を、超音波エコーで可視化した」という研究[2]を目にし、同じ手法で「男の潮吹き」のメカニズムも解明できるのではないか、という考えに至りました。
研究チームへのコンタクトがとれ、「男の潮吹き」に対する筆者の疑問を打ち明けたところ、先方からも大いに共感をえられました。そして、その後はトントン拍子で、筆者を被験者とした「男の潮吹き」研究の準備が進められたのでした。
「潮吹き」研究の方法
「潮吹き」の観察で使用する超音波プローブは、親指より少し太く、約10 cmの長さです。この研究では、このプローブを直腸に挿入した状態で潮を吹き、その時の骨盤内の臓器の動きや液体の流れを観察します。
ちなみに観察は、関係者(研究チーム、筆者、潮を吹かせてくれる協力者)が一堂に会した状態で行われ、しかも場所は岡山県なので、潮吹きに失敗しても、簡単には次の機会は設けられません。つまり実験本番は一発勝負、当日は絶対に潮を吹かなければなりません。
確実に潮を吹けるようにするために、本番に先立ち、筆者の事前練習が行われました。当日挿入するプローブと同じサイズの棒を3Dプリンターで製作し、これを挿入した状態で潮を吹けるように練習します。潮を吹かせてくれる協力者への指導も含め、数回の練習の末、直腸にプローブが入った状態でも、確実に潮を吹けるようになったのでした。
そして迎えた実験当日、このような台の上に仰向けに寝て、「潮吹き」が行われます。
こちらは、実際の実験風景です。写真中央と右端に筆者の膝が見えますが、その間に超音波プローブが挿入されようとしています。筆者の左側にいるのが潮を吹かせてくれる協力者で、左端のモニターにエコー映像が映し出されています。
準備が整い、関係者が見守る中、「潮吹き」の観察実験が開始されました。絶対に失敗できない状況でしたが、練習の甲斐もあり、協力者の用手的刺激によって約20分で射精、そしてそのまま刺激を続け、「潮吹き」することに成功しました。
「男の潮吹き」の正体
では、実験結果を解説したいと思います。
([1]より引用)
直腸に挿入された超音波エコーによって、このような画像(実際は動画)が得られました。
エコー画像は、こちらのイラストの赤線のエリアを、左に90°傾けた状態で見ていると考えてください。
まず、左側の画像は通常の射精時の様子です。黄色の矢印のように、精嚢(SV)から尿道へ液体が流れています。
そして右側の画像が、潮吹き中の様子です。素人目には分かりませんが、射精時とは異なり、液体は左下の膀胱(b)から前立腺尿道部(pu)へ流れていることが確認されました。このことから、潮として放出される液体は、膀胱由来の成分であるということがわかりました。
更に潮吹き中は、骨盤内の筋肉の収縮に合わせ、前立腺尿道部*(pu)が約1cmの拡大(左)と収縮(右)を繰り返している様子が観察されました。
*前立腺尿道部は前立腺内を貫く尿道のことで、この途中に精管が接続しています。
この拡大と収縮は、潮吹き開始後の60秒間で約20回繰り返されていました。この動きによって、ポンプと同じ原理で、膀胱から液体が前立腺尿道部(pu)に吸い上げられ、その後勢いよく放出されるのだと考えられます。
またこの実験では、放出された潮が回収され、成分分析が行われました。その結果、潮の成分は尿と同一であることが分かりました。
以上をまとめると、「男の潮吹き」とは、射精後の前立腺の周期的なポンプ運動によって、膀胱内の尿が吸い上げられ、そして尿道から放出される現象だということが分かりました。
以上が、世界初の「男の潮吹き」のエコー観察の結果と、そこから考察された潮吹きのメカニズムです。
「男の潮吹き」のやり方
最後に、この研究の結果と筆者の体験を基に、筆者の考える「男の潮吹き」のコツを解説したいと思います。
快感の強さが重要
研究結果から、「潮吹き」には前立腺の周期的な収縮が必要であることが分かりました。通常の射精時にも、下腹部がビクビクと痙攣する感覚があると思いますが、「潮吹き」時の前立腺の収縮は、射精時のビクビクの延長線上にあると考えられます。そして、多くの男性が体験していると思いますが、快感が強いほど射精時のビクビクも大きくなります。つまり、強い快感で射精するほど、前立腺も大きく収縮し、激しい「潮吹き」が可能だと考えられます。
実際、筆者の体験でも、強い快感で射精したときほど、その直後の「潮吹き」も激しくなります。逆に射精の快感が中途半端なときは、「潮吹き」は不可能か、とても「潮吹き」とは呼べない、ただの放尿で終わります。
なので「潮吹き」を試みる際は、あまり潮を吹くことは意識せずに、まずは快感に集中して、大きなオーガズムを得ることが肝要です。
骨盤底筋の強さが重要
前立腺の強い収縮を起こすためには、その収縮力を生み出す筋肉の強さが重要です。
これはまだ推測の域を出ませんが、前立腺周囲の筋肉、つまり骨盤底筋を鍛えることで、前立腺の収縮力を増加させられる可能性があります。
骨盤底筋は、骨盤底筋体操によってトレーニングすることが可能です。
尿を漏らす感覚が重要
そして、恐らく一番大切なコツが、「尿を漏らす感覚」です。射精後の陰茎は敏感になっており、刺激されると何だか漏らしてしまうような、もどかしい感覚になると思います。「潮吹き」では、この放尿しそうな感覚が高まったら、我慢せずに漏らしてしまうことが重要だと筆者は考えます。
逆に筆者の場合、この「漏らす感覚」なしでは「潮吹き」を始めることができないため、これが「潮吹き」のトリガーとなる重要な要素だと考えています。
今回紹介した研究結果から考えても、「漏らす」動きをすることで膀胱の出口(膀胱頸部)が緩み、それに乗じて前立腺のポンプ運動が尿を膀胱から吸い出すのだと想像できます。
漏らし方については、射精後の刺激によるもどかしさが不快感に変わる少し前に、骨盤底筋を脱力させて放尿しようとする、という方法が筆者のオススメです。
この感覚になれれば、あとは自動的に「男の潮吹き」が起こるはずです。
「男の潮吹き」を体験したいという方は、メカニズムとこれらのコツを理解した上で、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
まとめ:セクシャルサイエンスの発展のために
今回は「男の潮吹き」について解説しました。注意として、今回紹介した現象は、あくまで筆者にとっての「男の潮吹き」であり、研究の被験者も筆者1名だけでした。「男の潮吹き」が明確に定義されていない以上、何を以って「男の潮吹き」とするかは人ぞれぞれです。今後セクシャルサイエンス分野の研究が積み重なれば、「男の潮吹き」のみならず、人間の快楽についての理解が深まっていくはずです。人類全体の幸福のために、TENGAヘルスケアは、今後も性に関する研究を通じて、セクシャルサイエンスの発展に貢献していきたいと思います。
【参考/引用元】
[1]Hara, Ryoei, et al. "Male squirting: Analysis of one case using color Doppler ultrasonography." IJU Case Reports 1.1 (2018): 19-21.
[2]Nagai, Atsushi, et al. "Analysis of human ejaculation using color Doppler ultrasonography: a comparison between antegrade and retrograde ejaculation." Urology 65.2 (2005): 365-368.
<この記事の監修>
福元メンズヘルスクリニック 院長
福元 和彦(医師)
■泌尿器科医 ■性機能学会専門医 ■抗加齢医学会専門医 ■排尿機能学会認定医
福元メンズヘルスクリニック
<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
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