妊活中にお酒はOK?〜飲酒が妊活に与える影響とお酒との付き合い方〜
注)「ちつ」の解剖学的に正しい表記は「腟」ですが、この記事では一般的な表記である「膣」を使用します。
CM広告などで「妊娠中・授乳期の飲酒はやめましょう」という、この言葉。
よく目にするのではないでしょうか。
妊娠中の飲酒は、胎児の健康被害の原因になる可能性があり、注意する必要があります。
また、授乳期においても、微量ではあるものの、乳児が母乳を介してアルコールを摂取してしまうため、授乳中は基本的には飲酒は避ける必要があります。
では妊活中はどうなのでしょうか?
妊活では女性だけでなく、男性の飲酒も影響するのでしょうか?影響するとしたら、どの程度影響するのでしょうか?
この記事では、飲酒がもたらす妊活への影響について解説します。「お酒が好き!」という方は特に、適切な知識を持って妊活に取り組みましょう。
目次
妊活中のお酒の影響
妊活中の飲酒(女性編)
適切な飲酒量は?
いつまでなら飲酒しても大丈夫?
妊活中の飲酒(男性編)
適切な飲酒量は?
いつまでなら飲酒しても大丈夫?
妊活中のお酒による、意外な影響
お酒によるED!!膣内射精障害!!
お酒によるカップルのコミュニケーション
まとめ:妊活中のお酒は“適度に”を心掛けよう
妊活中のお酒の影響
妊娠中の飲酒が胎児に影響があることも、授乳期の飲酒が乳児に影響があることも、どちらも女性にのみ関係することです。
しかし、妊活中の飲酒は女性だけでなく、男性にも関係するのではないかと思いますよね。
それでは、飲酒がもたらす妊活への影響を男女別に分けて解説します。まずは女性側の飲酒の影響を見ていきましょう。
妊活中の飲酒(女性編)
意外なことに、適量であれば女性の飲酒が妊娠率に影響することは少ないと報告されています。
デンマークのオーフス大学の研究では、不妊治療を受けていない妊活中の女性(21~45歳、6,120人)の、飲酒量と妊娠の有無について調査が行われ、その結果飲酒によって妊娠率が低下するという明らかな結果は示されませんでした[1]。
適切な飲酒量は?
先のデンマークの研究では、週14単位未満の飲酒であれば、妊娠力の低下は確認されませんでした。
ちなみに1単位の量は、ビールであれば缶1本(330 ml)です。 週14単位(未満)だと、ビールで1日1~2杯です。妊活中の飲酒量は、この辺りを目安にしましょう。
いつまでなら飲酒しても大丈夫?
1日1~2杯程度の飲酒であれば、妊娠率に大きな影響はないことが分かりました。ただし、妊娠中は飲酒は控えるべきで、また妊娠初期は妊娠しているかハッキリ分からないことがほとんどなので、排卵期や妊娠した可能性が少しでもあるときは、お酒は控えた方が賢明です。
ただ、ストレスは妊娠を妨げる要因となるため、妊活中はリラックスした生活を心がけることが大切です。少量の飲酒がストレス発散になる、もしくは禁酒すること自体が過剰なストレスになる場合は、一概に飲酒を控えるべきだとは言えないかもしれません。
妊活中の飲酒については、医療機関によっても意見が分かれるので、通院している場合は、医師に相談してみるのが良いでしょう。
妊活中の飲酒(男性編)
次に、男性の飲酒の影響を見ていきましょう。
男性の飲酒の影響については、デンマークと北米の不妊治療を受けていない妊活中の男性2,679名に対し、調査が行われました。この研究では、男性の飲酒は、適量であれば妊娠率に影響しないことが報告されました[2]。
適切な飲酒量は?
上記の研究では、女性の研究と同様に、下図の通りに週の飲酒単位毎の妊娠率が調査されています。
その結果、男性の場合、週に14単位以上飲酒しても、妊娠率の低下は確認されませんでした。
ただし、この調査対象者の内、週14単位以上の人は少数であったため、週14単位以上の飲酒の影響については、「はっきりしない部分がある」という意見もあります[3]。
どちらにせよ、過度な飲酒は妊活に限らず、様々な健康被害に繋がります。日頃から、適量を心がけることが大切です
また、アルコールによって勃起がしづらくなる方は、性行為前の飲酒は控えた方が良いかもしれません。この点に関しては、後の項で詳しくご紹介します。
いつまでなら飲酒しても大丈夫?
女性と異なり、男性は妊娠することはないので、時期の制約はありません。
ただし、女性は妊娠中お酒を控える必要があり、パートナー(男性)の飲酒に対して、「自分は我慢しているのに、隣で気にせず飲む夫にイラッとした」「お酒の匂いがすると不快に感じた」という意見もよく聞かれます。
パートナー(女性)が妊娠中や授乳中の男性は、この点をしっかりと心に留めたうえで、行動されると良いでしょう。
妊活中のお酒による、意外な影響
男女共に適量であれば、妊活中の飲酒は妊娠率に大きく影響しない、ということが分かりました。
ただし、飲酒が妊活の過程に影響を及ぼすことがあるので注意は必要です。
お酒によるED!!膣内射精障害!!
自然妊娠を目指す場合、膣内で射精する必要があるため、ED(勃起不全)や膣内射精障害は妊活の妨げとなります。
そして「お酒を飲むと勃起や射精の感覚が変わるんだよな」と、感じている男性も多いのではないでしょうか?
この感覚は正しく、アルコールが自律神経や脳の働きに影響し、勃起や射精を妨げる場合があることが分かっています。
少量のアルコールでも、自律神経に影響し、神経の状態をリラックスから緊張に切り替えられなくなると、射精が難しくなります。また多量のアルコールで、勃起すらままならない場合もあるでしょう。
もし、飲酒が勃起や射精に影響しているなと感じる場合は、セックスする日は飲酒量やタイミングに注意しましょう。
お酒によるカップルのコミュニケーション
妊活をスムーズに進めるためには、男女が足並みを揃えて、協力して取り組むことが大切です。
なので、悩みや気がかりがあれば、相手と相談することが大切です。ただ、セックスに関する話題は、何だか気が引けたり恥ずかしかったりして、なかなか上手く話せない人も多いでしょう。そのような場合、お酒の力でコミュニケーションを図るのも良いかもしれません。
「酔い」を利用して性行為のお誘いを試みるのも妊活の1つです。
まとめ:妊活中のお酒は“適度に”を心掛けよう
男女共に妊活中の飲酒は、適度な量であればそれほど心配ないことが分かりました。もちろんストレスにならないのであれば、禁酒することに越したことはありませんが、つい会社の飲み会に参加してしまったり、自宅でうっかり飲んでしまったりしたとしても、あまり自分や相手を責めすぎないようにしましょう。
お酒とも上手く付き合いながら、二人で協力して、妊活に取り組んでいってください。
【参考/出典元】
[1]Mikkelsen, Ellen M., et al. "Alcohol consumption and fecundability: prospective Danish cohort study." bmj 354 (2016).
[2]Høyer, S., et al. "Male alcohol consumption and fecundability." Human Reproduction 35.4 (2020): 816-825.
[3]亀田IVFクリニック幕張 男性のアルコール消費と妊娠のしやすさとの関連性
SRHケアクリニック静岡院長
聖隷浜松病院 リプロダクションセンター
今井 伸(医師)
■泌尿器科医 ■性機能専門医 ■生殖医学会生殖医療専門医 ■性科学会認定セックス・セラピスト専門医
聖隷浜松病院リプロダクションセンター
<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!