男性のための妊活Q&A【前編】〜男性不妊の原因と妊活前にできること〜

妊活は女性だけが頑張るものと思っていませんか?

実は、不妊カップルの約半分は男性にも原因がある(=男性不妊)とWHOより報告されています。

妊活は夫婦二人で行うものです。女性の妊活については多くの情報がありますが、今回はまだあまり知られていない「男性の妊活」について、実際にTENGAヘルスケアに寄せられた質問から、Q&A形式で2つ実例を紹介します。

後編はこちら↓
〈参考〉 男性のための妊活Q&A【後編】

Q1. 男性不妊の原因は?

男性 妊活 精子 検査

そもそも「不妊」とは、日本産科婦人科学会によると「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(一般的には1年間)妊娠しない状態」と定義されています。一年間、妊娠に取り組まれたとのことですので、不妊と言えます。

不妊の中でも、原因が男性にもある状態を「男性不妊」と呼びます。ここでは「男性不妊」の原因を見ていきましょう。

〈参考〉男性不妊症の基礎知識

原因①「造精機能障害」

男性不妊の原因で一番多いのが「造精機能障害」で、男性不妊の原因の約8割を占めています。造精機能障害とは、「精子を造る能力や、造られた精子に何かしらの異常がある状態」を指します。「無精子症」や「乏精子症」などは、この造精機能障害に含まれます。

精子

造精機能障害の約半分は原因不明で、このタイプは「特発性の造精機能障害」と呼ばれています。不妊の原因が精子の異常だとわかったとしても、半分の場合で原因までは分からないということです。

残りの約半分のケースでは原因が特定されますが、どの道、精子の状態によって、妊活の取り組み方や治療の方法が変わります。ですので、できるだけ早めに精子の状態を把握することは非常に重要と言えます。

原因②「性機能障害」

次に多い原因が「性機能障害」です。性機能障害とは、「セックスや射精をする機能/能力の障害」を指します。自然妊娠に至るためには、「陰茎が勃起し、膣へ挿入して、膣内で射精する」という流れが必要ですが、この流れのどこかが上手くいかないと不妊の原因となります。勃起障害(ED)、膣内射精障害(重度の遅漏)などは、この性機能障害に含まれます。

性機能障害は、不妊の原因となるだけでなく、性生活の質の低下にも繋がります。専門の医療機関で治療できる場合もあるため、悩んでいる方は一度相談されることをオススメします。

〈参考〉 射精障害克服のために 専門医へのオンライン相談(カウンセリング)

また、稀ですが、「性嫌悪症」も不妊の原因になります。性嫌悪症とは、「性的な事柄に対し、極めて強い嫌悪感を抱く疾患」です。セックスを避けてしまうので、不妊の原因となります。気になる方は、下記のサイトを参考にしてください。

〈参考〉 ​​「セックスが嫌い」もしかして性嫌悪症?

Q2. 妊活前にできることはある?

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「妊活はなるべく早いタイミングで始めるべき」という周囲の指摘についてですが、妊娠率の観点ではこれは確かです。男女共に健康体であれば、妊活は早く始められるほど、妊娠率は高いと言われています。特に女性の年齢は重要で、妊娠率は20代をピークとし、それ以降は下降線をたどります。

〈参考〉妊娠開始のタイミングは?

それでも、まずは今を大切にして過ごしたいという方に向けて、将来の妊活をスムーズにするために、今のうちにやっておきたいことを紹介します。

妊活前にできること①プレコンセプションケア

まずは、男女共に、妊娠しやすい生活習慣を心がけることが大切です。生活習慣、特に食生活の改善によって、ホルモンバランスや精子・卵子の質が向上し、妊娠しやすい状態になります。

禁煙は言うまでもありませんが、寝不足や偏った食事、ストレスの多い生活は精子にとって悪影響です。将来の妊活のために質の良い精子を作っておく、そのために生活習慣は整えておくべきだと言えるでしょう。ただし、生活習慣はすぐには変えられないので、妊活開始前の今から少しずつ改善できると良いでしょう。

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このように、将来の妊娠を考えながら自分たちの生活や健康に向き合うことを「プレコンセプションケア」と言います。​​健康維持につとめて、生活習慣を見直し、妊娠しやすい体質に整えておきましょう。プレコンセプションケアに関する検診・相談、チェックシート等は下記のサイトを参考にしてください。

〈参考〉 ​​プレコンセプションケアセンター/国立成育医療研究センター

妊活前にできること②家族像をパートナーと共有しておく

 妊活は一人で行うものではありません。家庭像を共有するために、パートナーと話しておく必要があります。例えば、「何歳で子どもが欲しいか」「子どもは何人欲しいか」「子どもが欲しい理由は何か」「二人の子供ができなかった場合、それはそれで構わないか」です。

このような家庭像を基に、妊活のプランを立てるのが良いでしょう。パートナーと家族像の共通認識を持てていないと、すれ違いや、どちらか片方がストレスを抱えてしまうことになり、カップル間の関係性悪化に繋がります。このような状態は妊活へも悪影響ですが、妊活後の不和やセックスレスに繋がるケースも多々あります。

もし自分達だけでプランを立てることが難しそうであれば、医療機関や妊活の相談サービスを頼ってみてください。

家庭像や妊活のプランは、二人の年齢、体や仕事の状況などによって変化します。あまりこだわり過ぎずに、「変えるべきだな」と思ったら、パートナーと相談の上、随時更新していきましょう。

〈参考〉 妊活前に2人で話し合うべき3つのポイント、男性にも読みやすい妊活本

妊活前にできること③性感染症検査

男性が妊活前にできる健康チェックの中でも、重要なのが「性感染症検査」です。

男女共に、性感染症で生じる炎症によって、性機能が障害される可能性があります。クラミジアに感染している男性では、感染していない男性と比較して、精子濃度、精子運動率、精子正常形態率が低いことが報告されています[1]。

また、性感染症には「ピンポン感染」という特徴があり、自身の治療が完了しても、相手にうつしていれば、そこから再度感染してしまいます。これに陥らないように、性感染症はパートナーも一緒に検査を受けてもらうようにしましょう。

〈参考〉 ​​性感染症を知ろう

妊活前にできること④性機能チェック

その他にも、パートナーが居る場合、セックスをする習慣をつけることも大切です。セックスレスの改善は当然のこと、レスではない場合も日常的にセックスの頻度を上げておくと、いざ妊活を始めたときに無理をせずに済みます。

また、禁欲は精子の質を低下させます。普段から射精する習慣をつけることが妊活の近道となります。膣内射精障害や勃起障害(ED)なら、それも改善しておきましょう。

〈参考〉 ​​セックスでいけない?遅漏/膣内射精障害とは

まとめ:妊活は男性も

いかがでしたか?今回は男性の妊活についてQ&A形式で2つの実例を紹介しました。男性不妊の基礎知識や、今からできる男性の妊活の準備がおわかりいただけたかと思います。

妊活は女性だけでなく男性も一緒に取り組むものです。男性も適切な知識を身に着け、カップル一丸となって妊活に取り組みましょう。後編もあるので、引き続き参考にしてください。

後編はこちら↓
〈参考〉 男性のための妊活Q&A【後編】

 

【参考文献】
[1]クラミジアと精液検査の関係


<この記事の監修>
聖隷浜松病院リプロダクションセンター センター長
今井 伸(医師)
■泌尿器科医 ■性機能専門医 ■生殖医学会生殖医療専門医
■性科学会認定セックス・セラピスト専門医
聖隷浜松病院リプロダクションセンター

福田眞央 TENGAヘルスケア
<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 教育事業部
福田 眞央(ふくだ まお)
平成6年生まれ。保健体育科教員として高等学校に勤めた後に大学院に入り、ジェンダー学・性教育を専攻。2021年より株式会社TENGAヘルスケアに携わり、主に性教育WEBサイト「セイシル」を活用した教材作成に取り組む。
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