2021.10.01

性別とは何か?生殖と遺伝子編

ヒトという生物は基本的に、男(オス)と女(メス)という性別に分かれます。ただ、そもそも性別とは何なのでしょうか?なぜ男女という性別が生まれたのでしょうか?

今日、性にまつわる課題と言えば、ジェンダーの不平等やLGBTQへの差別・不理解など、社会的な課題が多く取り上げられます。また妊活や不妊治療も、当人やカップル、そして少子高齢化などを絡め、社会的な課題として扱われる場面が多いと思います。さらに言えば、セックスレスや離婚なども性にまつわる社会的な課題です。

しかし、性別(雌雄)とはもともと、生物が子孫を残すための過程で発生したものなので、性にまつわる課題がどれほど社会的に扱われても、その根本にはヒトという哺乳類の生殖活動、つまり生物学的な側面があるはずです。

これは、性にまつわる課題の社会的側面と生物学的側面が乖離しているという意味ではなく、一方を知れば他方への理解が深まる可能性もあります。

そこで今回は、生殖や遺伝の仕組みに関する簡単な解説を交え、性別とは何なのかについて考えていきたいと思います。

目次

遺伝とは
遺伝子、染色体、DNA、ゲノムとは
なぜ遺伝するのか 無性生殖と有性生殖
 オスとメスは何が違うのか
遺伝子を学ぶための参考書紹介
 利己的な遺伝子
 遺伝子 親密なる人類史(上巻・下巻)
まとめ:性への理解が視点を変える

遺伝とは

「遺伝」とは、親から子へ、そしてその子孫へ、先天的に形質(体の形や機能、性質など)が伝わる現象を指し、これによって親子は他人よりも似た形質を持つことになります。

この、遺伝される形質に関する情報を「遺伝情報」と呼び、遺伝情報の元になるのが「DNA」と呼ばれる物体です。

生殖とは、生物が自身と同種の個体を生み出すことを指しますが、それは同時に、自身の遺伝情報を残す行為でもあります。

性別を考える前提として、まずは遺伝情報と生殖について見ていきましょう。

遺伝子、染色体、DNA、ゲノムとは

性別とは 遺伝子 ゲノム 染色体 DNA

([1]より引用)

生物の細胞には「核」と呼ばれる場所があり、遺伝情報は核の中に収められています。

核の中には、23対(46本)の染色体が存在し、染色体はDNAと呼ばれる細長い分子が折りたたまれて構築されています。

DNAという単語はよく耳にすると思いますが、ここで注意点として、DNA(正式名:デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid))はただの物質の呼称であり、DNA=遺伝情報ではありません。

性別とは DNA 塩基対

([2]より引用)

DNAは4種類のアミノ酸、アデニン(A)、グアニン(T)、シトシン(G)、チミン(C)の組み合わせで構成されています。

この内、AとT、GとCが1セット(塩基対)で結合し、この塩基対が螺旋状に連結することでDNAとなります。

ヒトの塩基対は全部で約30億対あると言われています。この塩基対の並び順を「塩基配列」と呼び、これが情報として意味を持ちます。

どのような塩基配列かによって、DNA上のその場所が持つ機能が変わりますが、この内タンパク質の設計図としての役割を担う塩基配列が「遺伝子」と呼ばれます。

ヒトには2~3万(カ所)の遺伝子がありますが、DNA上で全ての遺伝子が隣り合いくっついているわけではなく、遺伝子の間には「遺伝子間領域」が存在します。

遺伝子間領域はタンパク質の設計図ではありませんが、遺伝子の働きを調整するなどの機能を担っています。

遺伝子や遺伝子間領域を含め、染色体上にある情報は「遺伝情報」と呼ばれ、全ての遺伝情報を指して「ゲノム」と呼びます。

DNAの塩基配列は個体で異なり(一卵性双生児を除く)、それはタンパク質の発現に差を生みます。生物の体はタンパク質で構成・管理・制御されているため、タンパク質が異なれば異なる形や機能として顕在化します。

これが個性であり形質であり、親から子へ遺伝されるものの正体です。

なぜ遺伝するのか 無性生殖と有性生殖

では、この遺伝情報は、なぜ遺伝するのでしょうか?その答えは、染色体が自身のコピーを作るからです。

性別とは 体細胞分裂 無性生殖 染色体

ヒトを含め生物の体内では、常に細胞分裂が行われ、新しい細胞が古い細胞に置き換わっていきます。

細胞分裂の際、核内では各染色体が自身のコピーを1つ作り、自身とコピーがそれぞれ分裂後の細胞に振り分けられます。

つまり基本的に、分裂前と同じ染色体を持った細胞が、2つできることになります。

一つの受精卵が、全く同じ染色体を分裂させていくので、生物一個体の体細胞は、全て同じ染色体を持つことになります。

以上は「体細胞分裂」と呼ばれる細胞分裂の方法ですが、この方法で個体自体も増殖させる生殖方法が「無性生殖」です。

無性生殖は、多くの単細胞生物(アメーバなど)、イソギンチャク、カビやキノコが行っています。

無性生殖による増殖では、親と子は同じ染色体を持つクローンなので、全ての遺伝情報が遺伝します。

性別とは 有性生殖 減数分裂 配偶子 卵子 精子 染色体

一方、2個体が染色体を組み合わせて、新しい個体を作る生殖を「有性生殖」と呼びます。

この染色体を組み合わせるための細胞は「配偶子」、一般的に「精子」と「卵子」と呼ばれます。

ヒトの場合、染色体は46本(23対)なので、それぞれの配偶子は半数(23本)の染色体を持ち、合体して46本となります。

この、半数の染色体を持つための特殊な細胞分裂の方法は「減数分裂」と呼ばれ、精子と卵子は減数分裂によって作られます。

有性生殖では異なる個体の配偶子が合体するため、子は親のクローンではなく、半分は別の個体の遺伝情報を引き継ぐことになります。

有性生殖と無性生殖には、それぞれにメリット・デメリットがありますが、ここではその議論は割愛します。

とにかく、染色体を分裂もしくは合体させることによって、生物は遺伝情報を子孫に残していくわけです。

オスとメスは何が違うのか

性別とは 染色体 ヒト 46本 写真

([3]より引用)

こちらは、ヒトの染色体の実際の写真です。

長さの似た1~22番(対)の染色体である「常染色体」と、長さの異なるX/Y染色体(「性染色体」)が見えます。

大部分の哺乳類において、性染色体がXYの個体はオス、XXの個体はメスと識別されます。

ですので、写真の染色体の持ち主はオス(男性)になります。

様々な例外はありつつも、有性生殖を行う生物において、この性染色体の組み合せが、その個体の雌雄を決定します。

では、この性染色体の組み合わせは、どのように決定されているのでしょうか?

人を含む大部分の哺乳類において、それはオス側の配偶子(減数分裂)によって決定されます。

減数分裂では、対となっている染色体のどちらかが配偶子に取り込まれるため*、オスの性染色体の分裂によって、X染色体を持つ精子と、Y染色体を持つ精子が生じます。
*実際はどちらか1本が選択されるわけではなく、対の染色体との組み換えが起こります。

メスの性染色体はXXなので、メスの配偶子(卵子)は必然的にX染色体を持つことになります。

つまり、精子の持つ性染色体によって、子の性別が決定することになります。

これが、有性生殖を行う大多数の生物における、性別決定のメカニズムです。

更に、この性染色体の差が、発現するタンパク質の差となり、それが「生物学的な性」の特徴の要因となり、我々が認識できる性別へ繋がっていきます。

遺伝子を学ぶための参考書紹介

今回は遺伝と生殖、雌雄の決定の仕組みについて簡単に解説しました。

ここまでの解説を踏まえ、「そもそもなぜ生物は遺伝情報を残そうとするのか」や「なぜ男女は異なる性質を持つのか」など、様々な疑問が浮かぶと思います。

ただ、この学問は深く広大で、本記事での解説には限界があります。

そこで、遺伝子(とそれに連なる生殖)についてより知りたい方のために、オススメの参考書籍を2冊紹介します。

利己的な遺伝子

性別とは 利己的な遺伝子

1冊目は、イギリスの生物学者であるリチャード・ドーキンス著の『利己的な遺伝子』です。

本書は1976年の初版発行以来、遺伝子の分野では読まない人はいないほどの、古典的名著です。

遺伝子を「自らのコピーを作ることを最優先とする存在」ととらえ、ヒトを含めた生物の行動原理(生存、生殖、対立、愛、進化...)を、遺伝子の視点から解き明かしていきます。

本書には、難解な分子機構や数学はほとんど登場せず、シンプルで直観的な説明がほとんどなため、遺伝子の事前知識がない方へもオススメです。

性に関しては、「雌雄の対立は配偶子(精子と卵子)のサイズ差に起因する」とした説明が特に秀逸で、筆者(私)の男女観はこの書によって一変されました。

性や生殖だけでなく、生物という存在や、人間社会の営みに対する考え方についても、多くの学びを得られます。

ちなみに本書は、一般投票で「英国史上最も影響力のある科学書」に選ばれたことが、2017年にイギリスの王立協会から発表されました。

遺伝子に興味がある方だけでなく、生物について理解を深めたいという方にも、オススメの一冊です。

➡購入はコチラ『利己的な遺伝子』

遺伝子 親密なる人類史(上巻・下巻)

性別とは 遺伝子 性別とは 遺伝子

2冊目は、インド人医師であるシッダール・ムカジー著の『遺伝子 親密なる人類史(上巻・下巻)』です。

本書は、1860年代に遺伝子の概念が誕生してから、2010年代初頭までの約150年間で、遺伝子がどのように研究され、理解され、積み重ねられ、そして利用されてきたかをたどる、壮大な大河ドラマです。

本書の素晴らしい点は、遺伝子の歴史を<科学><個人><社会>の3つの視点で描いていることです。遺伝子研究の発展とその裏にある人間ドラマをスリリングに描きつつ、それが社会にどのようなインパクトを与え、利用・悪用されてきたか、そして遺伝性疾患患者の身内を持つ著者自身の体験。この3つが折り重なることで、遺伝子が「身近で、社会と密接に関連し、そして強力な存在であること」を感じさせてくれます。

前出の『利己的な遺伝子』よりは科学用語が多く登場しますが、本書も事前知識がなくても理解可能な内容です。

上下巻を読めば、遺伝子と人類の関わり合いについて、学ぶことができるでしょう。

人類にとって遺伝子とは何か、そこに興味がある方には非常にオススメです。

➡購入はコチラ『遺伝子 親密なる人類史(上巻・下巻)』

まとめ:性への理解が視点を変える

性にまつわる課題は多種多様で、今日では社会的な側面が益々強くなっています。性という概念のバックボーンである、生殖や遺伝について理解できると、種々の課題を別の角度から眺めることも可能になるでしょう。それが、課題に対する解や気付きになることも、きっとあるでしょう。

 

【参考/出典元】
[1]国立研究開発法人国立がん研究センター, がんゲノム医療
[2]武田健一, 特別WEBコラム DNAシーケンサ, 公益社団法人応用物理学会
[3]Wikipedia, 染色体

この記事を書いたひと ➡ TENGAヘルスケア研究開発主任 S.T.

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