専門医に聞く、新型コロナと妊活① 不妊治療だけを控えるのはなぜ?/男女の妊娠前の感染が胎児に及ぼす影響
目次
不妊治療だけを控えるのはなぜ? 男女の妊娠前の感染が胎児に及ぼす影響
新型コロナウイルス感染症(以下新型コロナ)が拡大する中、日本生殖医学会からは4月1日、「国内での急速な拡大の危険性がなくなるまで、あるいは妊娠時に使用できる予防薬や治療薬が開発されるまでを目安に、不妊治療の延期を推奨する」という内容の声明が出されました。
※5月18日時点で、同学会から「不妊治療の再開を考慮してほしい」という内容の通知が出されています。以下は新型コロナ禍での妊活情報、もしくは一般的な妊活情報として、ご参考ください。
(日本生殖医学会のHP http://www.jsrm.or.jp/)
新型コロナと妊活に関する素朴な疑問について、産婦人科医の柴田綾子先生(淀川キリスト教病院 産婦人科所属)と、泌尿器科医の今井伸先生(聖隷浜松病院リプロダクションセンター
センター長)に伺いました。
全7回に分けてQ&A方式でお届けします。
この記事でわかること
Q.そもそも、どうして不妊治療を控える必要があるのでしょうか?
Q.どうして「妊活」の中で、不妊治療だけが延期を推奨されるのでしょうか?
Q.妊娠する前に感染した場合、卵子や子宮に何か影響がありますか?
Q.男性が感染した場合、精子や精巣に何か影響がありますか?
※※先生方の回答は取材した4月30日(柴田先生)、5月1日(今井先生)時点の情報に基づいています※※
Q.そもそも、どうして不妊治療を控える必要があるのでしょうか?
柴田先生:妊娠中に新型コロナに感染した場合、使える治療薬がまだ無いことや、赤ちゃんへの影響に関して十分なデータが集まっていないことが1番の理由です。
また、不妊治療で通院するときに感染してしまうことを予防することが目的です。
日本だけでなく、欧米でも同じように不妊治療を延期するような対策がとられています。
新型コロナにかかり重症になった患者さんには、現在、何種類かの薬を「研究」という厳重な管理下で使っています。本当に重症で、「治療をしているけれども命が危ない」という方に使わせていただき、その方のデータを取らせていただいている状況です。
ただ、その中には妊娠中の方に使った時に大丈夫かどうか、まだ研究されていない薬もあるんです。
現在の研究は主に妊娠していない方を対象にしているので、もし妊娠中の方が新型コロナに感染して重症になった場合、その薬を使えるかわからないというのが一番心配な理由になっています。
ただ、妊娠してはダメという訳ではありません。どうしても不妊治療は延期せざるをえない方が多いのですが、例えば妊娠しやすい時期に夫婦生活を行う「タイミング法」などの、自然妊娠を禁止している訳ではないのです。
Q.どうして「妊活」の中で、不妊治療だけが延期を推奨されるのでしょうか?
柴田先生:不妊治療は何回も通院する必要があるので、それによる感染リスクが高いからです。
不妊治療だけを制限しているわけではなく、現在は通院のため往来することによりウイルスをもらったり、広げたりする可能性があるので、「待てる」手術や処置はなるべく延期しようというのが全体的な流れになっています。
他にも例えば、妊婦健診の間隔をあけて回数を減らしたり、子宮筋腫や卵巣など婦人科系の手術も夏などに延期させていただいたりしています。
なので不妊治療に限らず、病院全体で、通院自体を減らしていただいている状態なのです。
Q.妊娠する前に感染した場合、卵子や子宮に何か影響がありますか?
柴田先生:今の時点(4月30日時点)では、新型コロナに感染したときに、卵子や子宮がダメージを受けるという報告はありません。妊娠しにくくなるとか、そういったことも今の時点では特に報告されていません。
ただ、最近言われているのは、重症になった時に全身の血管にダメージがおきる可能性があるということです。他には血栓という「血の塊」ができるやすくなる可能性も報告されています。ただし、新型コロナウイルス感染症は、多くの方は軽症で自然に治る病気です。血管のダメージは軽症で治ったときは、それほど影響を心配しなくてもいいと思います。
Q.男性が感染した場合、精子や精巣に何か影響がありますか?
今井先生:新型コロナウイルス感染が精巣や精子に直接ダメージを与えるという報告はありません(5月1日時点)。
そもそも、感染しているときに精液検査をすることはおそらくないと思いますし、感染後どうなるかということは、これから報告されてくると思います。
ただ、一般的に、熱が出たり、体力が消耗したり、疲労が出たりすると、一時的に精液の所見(精子濃度、運動率など)が悪くなるということはありますので、新型コロナ感染後に一時的に精液所見が悪くなるという可能性はあると思います。
※5月7日時点で、「新型コロナのウイルスが精液中に存在し、回復後も残存する可能性がある」という論文が発表されました。
この中で、38人の精液を検体としてPCR検査を行い、新型コロナウイルス感染症の急性期にある15人中4人(26.7%)、回復期にある23人中2人(8.7%)が陽性であったと報告しています。
精液所見(精子濃度、運動率など)に関しては記載されていません。
論文はこちら
今回お話を伺ったのは
柴田綾子先生 産婦人科医/淀川キリスト教病院 産婦人科所属
今井伸先生 泌尿器科医/聖隷浜松病院リプロダクションセンター センター長
【TENGAヘルスケアより】
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