妊活中の男性は必見!「精子を増やす7ヵ条」
妊活は、女性が取り組むだけでなく、男性による精子の改善も重要です。
精巣周辺の血管が詰まって精巣の温度が上昇する「精索静脈瘤(りゅう)」など、精液所見(精子の数や質)を悪化させている特段の原因がない場合、精子改善は生活習慣の見直しやサプリメントなどで行われます。
今回は生活習慣の中でも、精子改善のために特に意識したい、「精子を増やす7ヵ条」を解説します。妊活中や妊活予定の男性は、ぜひ生活習慣の見直しと共に、この7ヵ条を生活に取り入れていきましょう。
7ヵ条以外にも、「精子を増やす生活習慣」については下記のコラムを参考にしてください。
目次
精子を増やす7ヵ条 ①禁煙すべし
喫煙による酸化ストレスの増加が、精液所見を悪化させます。
実際、喫煙者の精液所見は、非喫煙者と比較して、精子濃度や精液量、運動率、形態正常率など、あらゆるパラメーターで有意に低いことが報告されています[1]。
非喫煙者と比較して、喫煙者では精子濃度が約1000万匹/ml少なかったとも報告されています[1]。自然妊娠に最低限必要な精子濃度の基準値が1400m万匹/mlであることを考えると、喫煙による1000万匹/mlの減少量は全く無視できません。
ちなみに、喫煙は卵子にも悪影響を及ぼすため、妊活中や妊活予定で喫煙している方は、男女ともに禁煙に取り組むべきでしょう。
精子を増やす7ヵ条 ②禁欲しない
基本的に「禁欲は精子に良くない」と考えてください。
禁欲すると精液量は増加しますが、古い精子が溜まることで精子の質は低下します。
イスラエルで実施された、男性6008人の9489検体を用いた研究によると、
- 乏精子症(精子濃度が少ない状態)患者の場合:禁欲期間1日後の採取で運動率はピークとなり、それ以降は減少していく
- 精子濃度が正常値の男性の場合:禁欲期間1~7日では、運動率はほぼ変わらず、8日目以降は減少していく
ということが確認されました[2]。
妊活中は、禁欲期間は1日程度(2日1回は射精する)ことが望ましいと言えます。セックスでなくても、マスターベーションでこまめに射精して、古い精子を溜めないようにしましょう。
〈参考〉 オナ禁(禁欲)の真実
禁欲期間と精液所見の関係については、以下でも詳しく解説されているので、参考にしてください。
<参考>
英メンズクリニック 男性不妊情報 禁欲期間は何日が最適?
精子を増やす7ヵ条 ③下着はトランクス ④サウナや長風呂は控える
⑤膝上のPC作業は控える
この3点は、「股間を涼しくする」というものです。
そもそも、精巣で精子を効率よく生産するためには、精巣の温度が体温よりも低い必要があります。多くの哺乳類で、急所であるにも関わらず、精巣は無防備にも体外についています。これも、精子が生成するのに適した温度が、体内よりも低いからです。
また、精巣の温度が上昇してしまう精索静脈瘤で精液所見が悪化することを考えると、「精巣の温度は低い方が良い」ということは明らかです。
精巣を涼しく保つために、下着はトランクスにしたり、サウナや長風呂、膝上のPC作業は控えるようにしましょう。
特にサウナについては、明らかに精液所見を悪化させるという報告がされています。
1年以上サウナ経験がない10名の男性が、週2回(1回15分)のサウナを3ヵ月間続けたところ、精子濃度、総精子数、運動率が有意に減少し、サウナをやめた後も、元の状態に戻るまでに6ヵ月を要することが確認されました[3]。
サウナ好きの方にはつらいかもしれませんが、妊活開始の約半年前からサウナは控えるべきでしょう。
[3]より改変
精子を増やす7ヵ条 ⑥長時間の自転車は控える
一般的に、適度な運動は精液所見を向上させますが、長時間の自転車は例外です。
これは、サドルの圧迫による会陰周辺の血流の悪化と、股間周辺の温度上昇が原因だと考えられています。
実際、マラウイ共和国(アフリカ)の自転車タクシーのドライバーや、インドのサイクリスト対象にした研究では、同年代の対象群を比較すると、基本的な精液所見(精液量、精子濃度、運動率、形態正常率)の全てで、数値が有意に低いことが報告されました[4][5]。
数値が半分以下に減少しているパラメーターもあり、妊活への影響は無視できないでしょう。
サドルの軟らかい自転車に短時間乗る程度なら影響は少ないと思われますが、長時間のロードバイク走行が趣味という方や、スポーツ施設でのバイクを使った有酸素運動をしている方、ロードバイクで宅配の仕事をしている方は、早めに一度、精液検査で状態を確認してみましょう。
精子を増やす7ヵ条 ⑦育毛剤に注意
育毛剤の成分の一種である「フィナステリド(商品名:プロペシア)」には、精液所見を悪化させる作用があると報告されています。
フィナステリドは、男性ホルモンの働きを阻害することで脱毛を防ぎますが、男性ホルモンは精子形成にも関与しているため、精液所見が悪化する原因になります。
実際、フィナステリドを使用している27名の男性不妊症患者で、フィナステリドの使用を中止したところ、総精子数が平均11.6倍も増加したことが確認されました[6]。
また、重度の乏精子症患者(精子濃度500万匹/ml未満)に限ると、フィナステリドの使用中止で、患者の57%が自然妊娠の最低ライン(1500万匹/ml)まで回復しました。
この変化量は、妊活において大きなインパクトがあると言えます。
「デュタステリド(商品名:ザガーロ)」もフィナステリドと同系統の薬剤のため精液所見を悪化させる可能性があります。一方、「ミノキシジル」はこれら2剤とは異なるタイプの薬剤であり、精液所見や性機能を悪化させたという報告がなく、比較的安心して使用できます。
妊活をしていて、育毛剤を使用している方や、購入を検討している方は、一度主治医との相談をオススメします。
まとめ:精子改善は無理せず根気よく
今回は、精液所見改善のための7ヵ条を紹介しました。簡単なものから、なかなか継続が難しそうなものもあります。古い精子が新しい精子に生まれ変わるには、2~3ヵ月必要だと言われているので、できることから早めに始めていきましょう。
<参考> 月刊TENGA12号 男こそ知りたい、妊活のいろは。
7ヵ条の実践前後は、自宅で簡単に精子を観察できるスマートフォン用精子観察キット「メンズルーペ」で変化を見てみましょう。もちろん、医療機関での精液検査を推奨しますが、まずは手軽に見てみたい方にオススメです。
〈参考〉 自宅で簡単精子チェック「メンズルーペ」
【参考/出典元】
[1]Sharma, Reecha, et al. “Cigarette smoking and semen quality: a new
meta-analysis examining the effect of the 2010 World Health Organization
laboratory methods for the examination of human semen.” European urology
70.4 (2016): 635-645.
[2]Levitas, Eliahu, et al. “Relationship between the duration of sexual
abstinence and semen quality: analysis of 9,489 semen samples.” Fertility
and sterility 83.6 (2005): 1680-1686.
[3]Garolla, Andrea, et al. “Seminal and molecular evidence that sauna
exposure affects human spermatogenesis.” Human Reproduction 28.4 (2013):
877-885.
[4]Kipandula, W., and F. Lampiao. “Semen profiles of young men involved as
bicycle taxi cyclists in Mangochi District, Malawi: A case-control study.”
Malawi Medical Journal 27.4 (2015): 151-153.
[5]Palekar, Santosh Shivalingappa, Nivedita Vaijanath Karanje, and Santosh
Shivalingappa Palekar. “A study on semen profile in bicycle cyclists.”
Indian Journal of Clinical Anatomy and Physiology 3.4 (2016): 490-493.
[6]Samplaski, Mary K., et al. “Finasteride use in the male infertility
population: effects on semen and hormone parameters.” Fertility and
sterility 100.6 (2013): 1542-1546.
聖隷浜松病院リプロダクションセンター センター長
今井 伸(医師)
■泌尿器科医 ■性機能専門医 ■生殖医学会生殖医療専門医
■性科学会認定セックス・セラピスト専門医
聖隷浜松病院リプロダクションセンター
<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!