「不妊」はどのような状態?定義や原因、男女別検査方法も解説

長い間妊娠しないと、このままできないのではないかと不安になるのではないでしょうか。自然妊娠が確認できないと、妊娠できない不安が、大きなストレスになってしまうこともあるでしょう。

この記事では、不妊の定義や原因、また不妊に関する男女別の検査方法も解説します。1人で悩まずに、パートナーと相談し合いながら妊活をしましょう。

 

不妊の定義について

不妊とは、妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交をしても一定期間妊娠しない状態をいいます。一般的には、この「一定期間」は1年と定義されています。女性に排卵がなかったり、子宮内膜症を合併していると、妊娠しにくいことが分かっています。このような場合は、不妊を疑って検査や治療を開始することが推奨されます。

また、男女ともに加齢が原因で妊娠しにくくなります。治療を先送りするとさらに妊娠しにくくなるため、一定期間を待たずに治療をスタートさせることが重要です。

不妊のカップルは約10組に1組といわれています。近年、妊娠を考える年齢が上昇していることもあり、この割合が高くなる傾向にあります。不妊治療の早期開始が、妊娠成功の鍵となることが多いです。

不妊の原因

不妊の原因は、男性側と女性側の両方にあります。なお、排卵のタイミングや不明な原因による場合もあります。以下で、詳しく解説します。

女性の場合

女性の不妊の原因には、下記のような状態が挙げられます。

  • 排卵因子
  • 卵管因子
  • 頸管因子
  • 免疫因子
  • 子宮因子

排卵因子

排卵障害は不妊の大きな原因の一つです。月経の約2週間前には排卵が起こり、妊娠に向けて準備が進みますが、月経不順の女性の場合、出血があっても排卵を伴わないことがあります。

排卵が起こらない原因には、甲状腺など女性ホルモンを分泌する仕組みに影響を与える病気、極度の肥満や体重減少、男性ホルモンが高くなるホルモンのバランス異常(多嚢胞性卵巣症候群)などがあります。

卵管因子

卵管が炎症を理由に詰まると、妊娠が難しくなります。卵管炎やクラミジア感染症に罹患した経験がある場合、無症状のうちに卵管が詰まっていることがあります。強い月経痛がある場合は、子宮内膜症によって卵管周囲の癒着が起こることが多いです。

頸管因子

排卵が近づくと子宮頸管内部を満たす粘液が、精子が通りやすい状態に変化しますが、粘液の分泌が少なかったり、粘液の質が悪かったりすると妊娠の妨げになります。

免疫因子

まれに、免疫の力で精子を攻撃する抗体(抗精子抗体)を保有している女性がいます。この場合、精子の運動性が低下し、卵子に到達することが困難になります。

子宮因子

子宮筋腫や先天性の形態異常が原因で、卵子が育たないことがあります。これにより、受精卵が着床しにくくなることが不妊の原因となります。

男性の場合

男性の不妊の原因には、以下のような状態が挙げられます。

  • 造精機能障害
  • 精路通過障害
  • 性機能障害

造精機能障害

精子の数が少なく、運動率が低いと妊娠しにくい傾向があります。「精索静脈瘤」を発症すると精巣内の温度が高くなり、精子の数や運動性が低下します。

その他、ホルモンの異常や遺伝的な要因も造精機能障害の原因となります。

精路通過障害

作られた精子がペニスの先端まで通らないと、射精はできても精子は排出されません。原因には、過去の精巣上体炎により精管が詰まっていることが考えられます。

精管の閉塞や損傷によって精子が体外に出ない状態です。

性機能障害

勃起障害(ED)や膣内射精障害などの性機能障害があると妊娠が難しくなります。これらの障害はストレスや妊娠に対するプレッシャーが原因となることが多いですが、糖尿病などの生活習慣病が原因の場合もあります。適切な治療やカウンセリングが必要です。

男性の不妊は、これらの原因が複合的に絡み合っていることもあり、専門医の診断と治療が求められます。

参照:Q7.不妊症の検査はどこで、どんなことをするのですか?|日本生殖医学会

【男女別】不妊の検査方法

不妊を疑う際には、早めに医療機関を受診して検査を受けましょう。女性と男性では、受ける検査が異なります。

女性の場合

女性の不妊を疑う際には、以下のような検査を行います。

  • 内診・経膣超音波検査
  • 子宮卵管造影検査
  • ホルモンの検査
  • 性交後試験(Huhnerテスト、PCT)

内診・経膣超音波検査

産婦人科の診察台で、子宮や卵巣を産婦人科的に診察し、超音波を使用して子宮筋腫や卵巣のう腫、子宮内膜症などの異常を確認します。

子宮卵管造影検査

X線を用いて子宮口から子宮内に造影剤を注入し、子宮の形や卵管の閉塞を確認します。痛みを伴うことがありますが、この検査後に自然妊娠することもあります。

ホルモンの検査

血液検査により、女性ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、プロラクチン、甲状腺ホルモンのレベルを測定します。ホルモンのバランスを確認するために、月経周期にあわせて検査を行います。

性交後試験(Huhnerテスト、PCT)

排卵直前の性交後に子宮頸管粘液を採取し、運動精子の存在を確認します。直進運動精子が認められない場合、抗精子抗体が存在する可能性があります。

男性の場合

男性の不妊を疑う際には、以下のような検査を行います。

  • 精液検査
  • 泌尿器科的検査
  • 染色体・遺伝子検査

精液検査

マスターベーションで採取した精液を検査し、精子の数、運動率、形態、感染の有無などを確認します。検査は2-7日の禁欲期間後に行われ、日による変動があるため、複数回の検査が推奨されます。

泌尿器科的検査

不妊症の原因として最も多い精索静脈瘤の有無を確認するため、診察や超音波(エコー)検査を行います。その他、男性ホルモン(テストステロン)や性腺刺激ホルモン(LH、FSH)のレベルを調べる内分泌検査(採血)も実施します。

染色体・遺伝子検査

精子数が極端に少ない場合、染色体や遺伝子検査を行い、精子形成障害の原因を特定します。

参照:Q7.不妊症の検査はどこで、どんなことをするのですか?|日本生殖医学会

不妊治療には種類がある

不妊治療は、原因に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。やみくもに様々な方法を試すのではなく、状態に応じた不妊治療を選択しましょう。

原因がハッキリしている場合

原因が特定できた場合には、それに応じた不妊治療を行います。

排卵障害の場合、排卵誘発法を用いながらタイミング法や人工授精を併用することが効果的です。卵管狭窄の場合は、卵管癒着剥離術や卵管形成術を行い、卵管を開通させた後に体外受精を行います。子宮内膜症が原因の場合、腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術を行い、その後タイミング法や人工授精を行います。年齢によっては、早急に体外受精を行うことがほとんどです。

乏精子症や無精子症の場合、人工授精や体外受精を行います。精管閉塞が認められる場合、精路再建手術や精巣精子採取術が適応です。勃起障害や射精障害には、勃起障害治療薬を使用して治療を行い、その後人工授精を行います。

原因が分からない場合

不妊の原因が特定できない場合には、以下の治療方法を順次試みます。

  • タイミング法
  • 排卵誘発法
  • 人工授精

一般的には、タイミング法→排卵誘発法→人工授精→体外受精という順で、数周期で治療法をステップアップさせます。

タイミング法

タイミング法とは、排卵の2日前が最も妊娠しやすいとされる時期に性交を行う方法のことです。卵胞の大きさや尿中のホルモンを測定し、排卵日を推定します。

排卵誘発法

排卵誘発法とは、内服薬や注射を用いて排卵を促す方法のことです。排卵障害がある場合に選択されますが、人工授精の妊娠率を上げるためにも使用されます。

人工授精

人工授精とは、マスターベーションで採取した精液から運動率の高い精子を取り出し、妊娠しやすい時期に子宮内に注入する方法のことです。これにより、自然な性交による妊娠が難しい場合でも妊娠の可能性を高められるでしょう。

参照:【令和3年度成果物】マナミとタクヤのなるほど!不妊症のこと

妊活で感じるストレス、1人で抱え込まないで

妊活をするにあたって、不妊に対する不安は少なからずあるでしょう。

妊活中心の生活になると、妊娠することだけが目標の人生になってしまいます。そんな時には一呼吸おいて、一度正しい知識を知るところから始めましょう。

妊活で感じるストレスは、1人で抱え込んではいけません。身体はもちろん心の健康も、妊活に欠かせない要素になるからです。

不妊に対しても焦らず、なぜそうなっているのか原因を調べて対策を検討していきましょう。