精子の形 正常形態率とは?

妊活中や妊活をこれから行いたいという方は、精子の形を気にしたことはありますか?精子の形は、妊娠の成否に影響する重要な要素です。今回は妊活の基礎知識として、精子の形「形態正常率」について解説します。

精子には様々な形がある

精子 形 形態 奇形

([1]より引用)

精子はおおまかに、「頭部」「中片部」「尾部」の3つで構成されています。

上の図はさまざまな精子の形を表していて、一番左が形態良好の「正常精子」ですが、それ以外は全て形態不良の「異常精子」になります。

ここに挙げた以外にも、頭部に空砲ができていたり、中片部が曲がっていたり、尾部が無いといった形態不良も存在します。

一般的に、妊娠するためには、形態良好の精子が受精する必要があり、形態不良の精子では妊娠が起こらないと考えられています。

 

([2]より改変)

実際の精子は、顕微鏡でこのように観察できます(観察用の染色がされています)。7番のみが形態良好で、それ以外は全て形態不良です。

顕微授精では、これらの精子の中から、培養士によって形態良好な精子が選び出され、卵子に注入されます。

正常形態率 ほとんどの精子は形態不良

「精子って、一回の射精で数億匹出るって言うし、形が異常な精子も少しはいるだろうね」と思っている場合、それは大きな間違いです。

WHO 精液所見 基準値 精子 状態

([3]より改変)WHOの精液検査の基準値 赤枠が自然妊娠に必要な下限値

1回の射精精液中の、形態良好な精子の数の割合は「正常形態率」と呼ばれます。

WHOが定める自然妊娠するために必要な形態正常率の下限値は、わずか4%です。

中央値でも形態正常率は15%なので、精子の多くは形態不良だと言えます。


平均

中央値

WHOの基準値
精液量(ml)
3.1

3.0

1.5
精子濃度(匹/ml)
1億500万

8400万

1500万
総精子数(匹/射精)
3億1700万

2億3900万

3900万
運動率(%)
67

66

40
正常形態率(%)
9.8

8.5

4.0

([4]より改変)

一定期間内にパートナーが妊娠した日本人男性でも、正常形態率は平均値・中央値ともに10%を切っており、やはり精子の大半は形態不良だと言えます。

正常形態率は精液検査でしか分からない

妊活を少しでも意識したら、まずは精液検査を受けることが重要です。

不妊のカップルの約半分で、男性側にも原因があるため、精液検査の遅れは妊活の遅れに直結します。

近年は、自宅用の精子観察キットが販売されていますが、正常形態率は限られた医療機関でしか検査できません。

気になる場合は、正常形態率の検査が可能な医療機関での、早めの精液検査が推奨されます。

正常形態率の改善方法

他の精液所見(精液量や精子濃度など)と同様、正常形態率も生活習慣やサプリメントで改善が可能です。

改善方法は以下にまとめているので、気になる方は参考にしてください。

<参考>
精子を増やす!妊活のための精子の増やし方を解説

まとめ:精子の形は妊活で重要

正常な場合でも、ほとんどの精子が形態不良だということが分かりました。逆に考えると、正常形態率が改善すれば、妊娠可能な精子は大きく増加します。まずは精液検査を行って状態を知り、それに応じた対策を行いましょう。

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おまけ:動物の精子は形が違う?

動物 哺乳類 精子 形

([5]より引用)

最後に、動物の精子について紹介します。

「どの生物も精子の形は大体同じでしょ?」と思ったら大間違い。精子の形は動物種ごとに大きく異なります。

哺乳類だけでも、これだけ頭部の形に差がありますが、他の脊椎動物や昆虫などまで含めると、更に多種多様になります。

動物種で精子の形に差が生じる理由は、まだはっきり解明されていません。

ヒトを含め、精子の研究が今後益々発展し、より良い生殖医療が確立されることを期待しましょう。

 

【参考/出典元】
[1]花小金井レディースクリニック, 不妊症の検査について
[2]ヒト精液検査と手技 WHO・ラボマニュアル5版
翻訳(高度生殖医療技術研究所)

[3]WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen,
Sixth edition, 2021

[4]Iwamoto, Tehttps://ruaki, et al. “Semen quality of fertile Japanese men:
a cross-sectional population-based study of 792 men.” BMJ open 3.1
(2013).

[5]http://nature.cc.hirosaki-u.ac.jp/lab/3/animsci/text_id/Germ%20Cells.html

 

聖隷浜松病院リプロダクションセンター センター長
今井 伸(医師)
■泌尿器科医 ■性機能専門医 ■生殖医学会生殖医療専門医
■性科学会認定セックス・セラピスト専門医
聖隷浜松病院リプロダクションセンター

<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!