「セックスが嫌い」もしかして性嫌悪症?妊活での対処方法も紹介

「セックスしたくない」「子どもが欲しいのにパートナーに体を触られることが苦痛」…もしかしたら、それは「性嫌悪症」かもしれません。性嫌悪症は女性だけでなく、男性もなりえます。自分やパートナーがセックス嫌いでお困りの方は、性嫌悪症の可能性も考えてみましょう。この記事では、性嫌悪症とはどのようなものなのか、妊活への影響や克服方法を解説しています。

性嫌悪症とは?女性だけでなく男性も

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まずは、性嫌悪症の症状について解説していきます。性別に関係なく「セックスが嫌い」「性的なことが嫌でたまらない」と思ったら、それは性嫌悪症かもしれません。

性嫌悪症とは?

性嫌悪症は、セックスなどの性的な行為そのものや、性的な事柄に対して嫌悪感を抱く「性機能障害」の一つです。

性的な事柄に対して嫌な気持ちを抱いたことがある、という方は多いと思いますが、それは一時的であったり、パートナーとであれば嫌悪感を抱かなかったりすることが普通です。

しかし、性嫌悪症の場合は、性的なことへの嫌悪感が「常に」または「繰り返して」起こります。たとえ相手がパートナーであっても、性的な行為となると嫌悪感を覚えます。

性嫌悪症の症状には個人差が

性嫌悪症の人が、嫌悪感を覚える状況はさまざまです。「性的な視線を向けられること」へ嫌悪感を覚える人もいれば、「性的な表現全般」に対して不快感を覚える人もいます。また、症状の程度にも個人差があり、「苦痛を感じるもののセックスは可能」いう人もいれば、「異性との会話も不可能」という場合もあります。

「性嫌悪症=女性だけ」ではない

「性嫌悪症」=「女性がなるもの」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、男性も性嫌悪症になりえます。男性がセックスを苦痛に感じたり、性的な事柄に対して嫌悪感を抱く場合も、性嫌悪症の可能性を考える必要があります。

性嫌悪症の原因

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性嫌悪症の人は、「なぜ性的なことへの嫌悪感がこんなに強いのだろう」と自分でも不思議に思うことがあるそうです。性嫌悪症の原因はさまざまですが、代表的な理由をいくつか見ていきましょう。

異性や性的な事柄への刷り込まれたイメージ

性的な事柄へどのような感情を抱くかは、幼少期~思春期に受けた教育が影響することもあります。

親などからの「性は汚らわしいもの」「セックスは悪いこと」といったイメージの刷り込みや、性的な行為(セックスやマスターベーション)に対して厳しく咎められた経験から、「性的なこと」=「悪いこと」という考えが定着してしまいます。この定着したイメージが性嫌悪症に繋がる場合があります。

性的なトラウマ

性的虐待や性的暴行に遭った体験があると、それがトラウマとなり、性的な場面でその記憶を呼び戻されてしまうこともあります。性的暴行までいかずとも、性交痛の経験が、セックスへの恐怖心へ繋がる場合もあります。

物理的な暴力や痛みだけでなく、言葉による心の傷がトラウマになる場合もあります。体のこと、胸や陰茎の形やサイズ、勃起能力、濡れ具合、匂いなどを罵られ、そのつらい経験がトラウマになってしまいます。

出産や子育て

出産や育児が原因で性嫌悪症になる場合もあります。

育児中はホルモンのバランスが変化し(女性だけでなく男性も)、それが原因でセックスを避けるようになる場合があります。

また、出産の光景の想像以上のグロテスクさがトラウマになってしまったり、出産や授乳による体の変化に嫌悪感を覚える場合もあります。

愛情の質の変化

パートナーのことは好きだが異性として見られない、という場合も。長く一緒にいることで、異性としての愛が、家族としての愛へと変化してしまいます。家族として接することが当たり前になると、セックスの際に近親相姦のように感じてしまい、それが嫌悪感になる場合もあります。

性嫌悪症かも?セルフチェックで確認

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自分が性嫌悪症かどうか知りたいという方は、次の項目に当てはまるかチェックしてみましょう。

<性嫌悪症のセルフチェック>[1]

  • セックスのことを考えると不安になる
  • セックスが怖い
  • 性欲が減っている
  • パートナーからの性的接触を避けている
  • 異性と2人きりになるのを避けている
  • 自分の身体はセックスに適していないと感じる
  • セックスが日常生活の不満の種になっている
  • セックスに対する自分の態度は異常だと思う

もしチェック項目のいくつかに当てはまる場合、性嫌悪症の可能性があります。性嫌悪症の診断を希望する場合は、性機能障害を扱う専門の医療機関を受診しましょう。

性嫌悪症の妊活への影響と対処法

性嫌悪症 妊活

性嫌悪症でセックスできなくても困っていなければ、無理に克服する必要は無いのかもしれません。しかし妊活中の場合、何かしらの対策が必要です。性嫌悪症の妊活への影響と、対処法を解説します。

セックスできない

自然妊娠するためには、セックスによって膣内で射精する必要があります。しかし、妊活のためだからといって、性嫌悪症を抱えたままセックスに臨んでも、男性の場合はED(勃起不全)や膣内射精障害になったり、女性の場合は性交痛で挿入ができないこともあるでしょう。

セックスができず妊活が進められない、という状況です。

ストレスが苦痛になる

性嫌悪症でも、無理をすればセックスできる人もいます。しかしセックスに伴うストレスが大きければ、妊活や日常生活に悪影響が出る場合もあるでしょう。

そのストレスが、二人のすれ違いや不仲の原因になる可能性もあります。妊活ではカップルの協力が重要なので、ストレスを抱えたまま妊活を進めるのは、危ういと言えるでしょう。

シリンジ法で対処可能

「セックスせずに妊活できればいいのに…」とお考えの方には、「シリンジ法」がオススメですシリンジ法は、男性が容器に採取した精液を、専用のシリンジとカテーテルで吸引し、膣内へ注入する方法です。セックスせずとも、セックスで膣内射精をした状況を作ることができます。

以下の条件を満たしているカップルは、性嫌悪症でもシリンジ法を実施することが可能です。

<シリンジ法が行える条件>

  • 男女共に器質性の疾患がなく、自然妊娠が可能な体の状態
  • マスターベーションでの射精が可能
  • 小指程度の細い物なら、膣に挿入可能
  • セックスをしないで妊娠することに抵抗がない

性嫌悪症でセックスが困難だとしても、シリンジ法を使えば妊活を諦める必要はありません。

<参考>
シリンジ法を知れば、妊活はもっと自由になる 「Seed
in」でセルフ妊活の選択肢を

Seed in シリンジ

性嫌悪症を克服したい!治療の方法は?

性嫌悪症 治療 克服

先程紹介したシリンジ法は、セックスを避けて妊活する方法で、性嫌悪症を克服できるわけではありません。ただ自分やパートナーのために、性嫌悪症自体を克服したいと思っている方もいるでしょう。

性嫌悪症の治療は難しい場合が多く、完治する割合は低いと言われていますが、改善を希望する方は以下に挙げる方法を試してみましょう。

パートナーとトライ!性嫌悪症の克服ステップ

いきなり医療機関を受診することへは抵抗がある場合は、まずは以下のステップで、パートナーとの接触機会を増やすことから始めてみましょう。無理せず、簡単な接触から始めていきましょう。

<性嫌悪症克服のステップ>
STEP1:パートナーとの接近を増やす
触れなくてもよいので、まずはパートナーと近い距離に居ることに慣れましょう。
例)隣に座って一緒にテレビを観る

STEP2:軽いスキンシップを取る
パートナーを呼ぶとき肩に軽く触れるなど、ごく短時間のさりげないスキンシップを取ってみましょう。
例)肩をトントンと軽く触れる、髪についたゴミを取ってあげる

STEP3:中くらいのスキンシップを取る
慣れてきたら、少しずつスキンシップを増やしていきましょう。自分が触れるだけでなく、相手からも触ってもらえると良いでしょう。
例)手をつなぐ、頭や背中を撫でる、肩を揉む/揉んでもらう

STEP4:より親密なスキンシップを取り合う
スキンシップに完全に慣れたら、ハグやキスに挑戦してみましょう。性器以外の部分をやさしく触り合いましょう。
スキンシップ中に少しでも嫌だと感じたら、無理せずすぐに中止しましょう。

性嫌悪症の治療は医療機関でも難しいため、焦らず数カ月~数年単位で取り組むつもりで臨みましょう

カウンセリングを受ける

1人で悩んでいてどうしようもない場合は、専門家のカウンセリングを受けることで、解決の糸口が掴めるかもしれません。カウンセリングを希望する場合は、臨床心理士などの国家資格を持ち、性嫌悪症の相談実績があるカウンセラーを探すのがベターです。また、日本性科学会でもカウンセリングを実施しています。

カウンセラーとの相性によって治療の進み具合も変わるため、自分と合う人が見つかるまで、色々探してみると良いでしょう。

<参考>
日本性科学会 カウンセリング室

まとめ:性嫌悪症では無理せずできることを

性嫌悪症の症状や原因、対処方法を紹介しました。性嫌悪症に限らず、性的なことで嫌悪感や違和感を覚えたときは、無理をしないことが大切です。また、自分ではなくパートナーが「性嫌悪症かも?」と思ったときは、無理せず(させず)寄り添ってあげてください。セックスができなくても妊活は可能なので、自分達のペースで対処していきましょう。

 

【参考/出典元】
[1]性嫌悪症質問紙(東邦大式)

 

<この記事の監修>
福元メンズヘルスクリニック 院長
福元 和彦(医師)
■泌尿器科医 ■性機能学会専門医 ■抗加齢医学会専門医 ■排尿機能学会認定医
福元メンズヘルスクリニック

<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!