一喜一憂は禁物!?精液検査の結果のバラツキについて

妊活中のカップルなら、精液検査を受けた経験があったり、これから受けるという方も多いのではないでしょうか。ただ、1回の精液検査で精子の状態がどれだけハッキリ分かるか、ご存じでしょうか?今回は精液検査の結果のバラツキについて解説します。

精液の状態はとてもバラつく

精子濃度のバラつき

[1]より改変

こちらは、健康な男性1名が、120週間にわたり毎週精液検査をした精子濃度の結果です。グラフの値は測定毎に大きく上下し、100倍程度の差も見受けられます。

この期間中、男性は投薬を受けたり、発熱が生じることはありませんでした。つまり精子の状態は、体調が安定していも、射精の度に大きく変動するということが分かります。この変動の要因は、射精時の気持ち良さや、男性の精神状態など所説ありますが、はっきりとした理由は分かっていません。

とにかく間違いないのは、一度の精液検査の結果では、その男性の精液の状態を適切に把握することはできない、ということです。自分の状態を適切に把握するために、精液検査は複数回受ける必要があります。

自宅での精子チェックでは精液の場所のバラツキにも注意

近年、自宅用の精子観察キットが各社から発売されていますが、ここでもバラツキに注意が必要です。前述の通り、精子の状態は射精の度に変動するため、自宅で観察する場合も、数日~1週間程度の期間を空けて、2~3回程度は観察するようにしましょう。

また、精液中の精子の分布は均一ではなく、1回の射精で得られた精液でも、見る液の場所によって、精子の数や動きに差があります。つまり、1箇所の測定では精子のチェックにはならないということです。WHOの精液検査のマニュアルでも、数カ所以上の測定を推奨しているため[2]、自宅で観察する場合も、精液の乗せ換えが可能なキットを選び、1回の精液で2~3カ所以上は観察するようにしましょう。

まとめ:精液検査は数回以上行おう

今回見たように、精液の状態は射精の度に大きく変動するため、自分の状態を適切に把握するためには、数回以上の精液検査が必要です。1回の結果で一喜一憂せず、必ず数回(できれば定期的に)検査を受けるようにしましょう。

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【参考/出典元】
[1]World Health Organisation. WHO laboratory manual for the examination of
human semen and sperm-cervical mucus interaction. Cambridge university
press, 1999.

[2]ヒト精液検査と手技 WHO・ラボマニュアル5版
翻訳(高度生殖医療技術研究所)

 

聖隷浜松病院リプロダクションセンター センター長
今井 伸(医師)
■泌尿器科医 ■性機能専門医 ■生殖医学会生殖医療専門医
■性科学会認定セックス・セラピスト専門医
聖隷浜松病院リプロダクションセンター

<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!