性教育への想い TENGAヘルスケアが性教育に取り組む理由
こんにちは、TENGAヘルスケア取締役の佐藤雅信です。TENGAヘルスケアでは2019年12月より、10代向け性教育サイト「セイシル」の運営を行っています。オープン以来、多くの中高生、学校関係者の方々にご利用いただき、累計訪問者数は300万人を越えました(2021年8月現在)。ただ、「なぜTENGAが性教育をやっているの?」という質問をいただくことが多々あります。そこで今回はセイシルをより理解してもらうために、TENGAヘルスケアの性教育への想いと、性教育を行っている理由について説明していきます。
TENGAヘルスケア取締役
佐藤 雅信(1982年生まれ)
2005年、創業初年度のTENGAに大学を休学して入社。
TENGA EGGなどのヒット商品を開発し、海外事業担当取締役などを歴任。
「性の悩みのない社会」を目指して2016年にTENGAヘルスケアを設立、同年より現職。
目次
TENGAと性教育
セイシルとは
セイシルを始めたきっかけ
きっかけ1 性教育現場からのリクエスト
きっかけ2 膣内射精障害と予防
きっかけ3 性の知識を得られない現状
きっかけ4 自分自身の経験
今後の性教育活動の展望
まとめ:性教育で性の悩みや不安のない社会を目指して
TENGAと性教育
そもそも株式会社TENGAは、「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というスローガンを掲げ、2005年に誕生しました。
このスローガンを通じ、人々の性生活を豊かにすることを目指しています。
スローガンの中には、創業当時より、「性に関する適切な知識を広める」ということも含まれていました。
この根底には、誤った知識や無知が原因で、自分や自分の大切な人が傷ついたり、悩みやトラブルが生じることなくしたい、という想いがあります。
TENGA、そしてそのヘルスケア部門であるTENGAヘルスケアは、単なるセクシャルアイテムの会社ではありません。人々の性生活を豊かにしたい。その一環として、性に関する適切な知識を広める活動(=性教育)が必要なのでした。
セイシルとは
この想いを胸に、TENGAヘルスケアが立ち上げたのが「セイシル」です。
セイシルは、10代が抱えるさまざまな性のモヤモヤに対し、専門家がこたえるサイトです。
セイシルの名称は、「性を知る」というところから来ています。
性の問題、悩み、疑問は多種多様です。
セイシルでは、それらに対する適切な情報提供のために、医師、看護師、教員、養護教諭、その他性の問題に関する支援団体のスタッフなど、幅広い専門家からの多角的な意見を掲載しています。
ジャンルも、恋愛や男女のからだのこと、性の多様性や性暴力、マスターベーションの方法まで幅広くそろえています。
性の悩みを現在抱えている10代の方にはもちろん、そうでない方も、見ていただくと将来きっと役に立つ知識がつまっています。
またセイシルは、10代だけでなく、大人が見てもためになるサイトになっています。ご自身が学ぶ他、親子で見て、性の話をするきっかけになれば嬉しいです。
セイシルを始めたきっかけ
「性教育を通じて、適切な性の知識を提供したい」という想いは、TENGA創業時から抱いていましたが、TENGAヘルスケアでのセイシルの開始には4つのきっかけがありました。
きっかけ1 性教育現場からのリクエスト
日本の性教育は、日本性教育協会や"人間と性"教育研究協議会、日本思春期学会、日本性科学会など、いくつかの団体によって、研究や教育者の育成が行われています。
TENGAは2009年以降、これらの団体への協賛や、イベント・勉強会へ参加してきました。
その中で、実際に性教育を行っている教育関係者や医療従事者の方から、「マスターベーションの方法を教えるために、参考となる資料を作ってほしい」という要望を多く頂きました。
確かに、保健体育の教科書の「マスターベーションについての記載」は、教科書ごとに表現や内容がバラバラなうえ、「適切なマスターベーションの方法」について詳細に記載している教科書はありませんでした。
この「適切なマスターベーションの方法」が教えられないという問題は、「膣内射精障害」の問題に直結します。
きっかけ2 膣内射精障害と予防
「膣内射精障害」とは、マスターベーションでは射精可能だが、膣内では射精できない状態を指します。
TENGAヘルスケアの調査によると、日本の20~70代男性の約20人に1人(推計270万人)は膣内射精障害だと言われています。
膣内射精障害(重度の遅漏)は妊活で困るだけでなく、女性の性交痛などの原因にもなり、セックスレスや離婚に繋がる場合もあります。
そして、膣内射精障害の原因の約7割は「不適切なマスターベーション」だと言われています[1]。
<参考>
膣内射精障害のリスク増 危ない!不適切なマスターベーション8選
詳細は上記の参考記事に譲りますが、膣とはかけ離れた刺激(強さ/やり方)でのマスターベーションを繰り返すことで、その刺激に慣れてしまい、膣内の刺激では射精できなくなってしまいます。
この場合、膣の刺激に近い「適切なマスターベーションでの射精に慣れる」という治療が必要です。しかし、一度身に付いたマスターベーションの方法を変えることは難しく、治療には数か月~数年の時間がかかります。
ですので最初から、膣内射精障害にならないように、「不適切なマスターベーション」を行わないことが大切です。つまり、思春期での「適切なマスターベーション教育」が非常に重要なのです。
きっかけ3 性の知識を得づらい現状
TENGAヘルスケアが2017年に実施した「全国男性自慰行為調査(通称:オナニー国勢調査)」によると、15~19歳の男性で、「マスターベーションについて、気軽に相談できる相手はいるか?」という質問に対し、「いない」と回答した割合は57.0%に上りました。
また、「相談可能な同性の友人がいる」と回答した割合も35.5%に留まりました。
性について気軽に相談し、時に自分のマスターベーションが特殊だと気付く機会も少ないことが伺えます。
しかし現代は、10代でも多くの方がスマートフォンを持ち、常に情報に触れられる社会になりました。
ひと昔なら、まず友人に聞いてみるような疑問も、インターネットですぐに検索できてしまいます。
そうであれば、インターネットを通じて、適切な性の知識を得られるようにしよう。
そしてそれを、周囲の人と性の話をするきっかけにしてもらおう。
この想いから、「知ろう、話そう、性のモヤモヤ」というスローガンを掲げて誕生したのが「セイシル」なのでした。
きっかけ4 自分自身の経験
実は筆者自身も、性の知識不足によって、つらい経験をしてきました。
不適切なマスターベーションで膣内射精障害になり、それが原因でセックスレスになったり、パートナーと離別したり。現在は結婚していますが、妊活でも大変困りました。
また、若い頃に行った不必要な包茎手術が原因で、ペニスの性感帯が麻痺してしまい、それ以降セックスやマスターベーションでの快感を大きく失ってしまいました。
これらの問題によって、恋愛に対する自信や、性に対するポジティブな感情も削がれてしまいました。
「10代の自分に、適切な性の知識があったなら」と後悔しない日はありません。
性の知識不足による誤った行動は、自分やパートナーの心と体に、一生残る大きな傷をつけることにもなるのです。
このようなつらい思いを、これからの子供達に味わわせないようにする、それも性教育の大きな役目だと考えています。
今後の性教育活動の展望
日本の性教育は発展途上です。
最近はブーム的な盛り上がりを見せていますが、北欧などの性教育先進国のレベルに到達するには、まだまだ長い時間がかかると言われています。
TENGAヘルスケアは、セイシルを通じて、日本の性教育の向上にも貢献したいと考えています。
性教育現場の先生方には、授業では教えきれない内容のカバーや、個々の生徒が抱える悩みのサポートとして、セイシルを活用していただきたいと考えています。
また、セイシルのコンテンツをベースにした授業や、学校でのチラシやステッカーの配布、ポスターの掲示なども行っており、既に多数の教育現場で採用が進んでいます。
性教育について困っている、より良い性教育を提供したい、と考えている教育関係の方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡いただければと思います。
<連絡先>
TENGAヘルスケア 教育事業担当
cs@tengahealthcare.co.jp
まとめ:性教育で性の悩みや不安のない社会を目指して
今回は、TENGAヘルスケアの性教育への想いを語らせてもらいました。
誰もが性の喜びを享受し、認め合う社会を実現するためには、適切な性の知識が不可欠です。より良い明日を目指し、これからもTENGAヘルスケアは邁進していきます。
【参考/出典元】
[1]阿部 輝夫『オルガズム障害とセックス・セラピー、セックス・カウンセリング入門 第2版』金原出版, p122-128, 2005.
<著者プロフィール>
TENGAヘルスケア 研究開発主任
牛場 栄之(うしば ひでゆき)
平成3年生まれ。大学および大学院では神経科学を専攻、2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当、その後現職。
製品開発のかたわら、皆さんに役立つ性や妊活の情報をお届けします!